せっかくなので、MOに会ってきた。
取材に応じてくれたのは、東京都江戸川区や同江東区でローソン17店舗を運営するイージスリテイリングの三木伸允社長(45)。9月末、江戸川区・西葛西にあるオフィス(コンビニのバックスペースではない)にお邪魔した。きっちり折り目のついたスーツにネクタイという出で立ちは、なんとなく外資系のコンサル会社社員のような印象を受ける。
三木社長がMOになったのは2010年。家族がコンビニ加盟店を運営していたこともあり、25年前にアルバイトとしてコンビニで働き始めた。運営する店舗は長らく西葛西の2店だけだったが、ローソンから2009年ころ「MO制度というものが始まる。チャレンジしてませんか」と誘われる。家族でのコンビニ運営に限界を感じていた三木社長はこれに応募。6~7カ月にわたって開かれるMO研修を経て、無事MOと認定された。
何が一番変わったのか。
「地域に散らばる店舗を、点ではなくて面で運営できるようになったのです」。三木社長は話す。

これまでは店舗ごとの稼ぎが重視されたため、赤字を出しにくかった。多店舗を運営する「企業」なら、仮に1店舗が赤字だとしてもほかの店舗で埋め合わせればいい。そのぶん新店舗でも強気の商品発注ができるので、店内の棚を商品で埋められ、将来的に黒字転換するまで投資して待つことができる。
アルバイト社員が病気やけがなどで欠席しても、同じ地域にある自社の他の店舗から人員を補充することもできる。「数店舗の運営だったときは私自身、なかなか休みが取れなかったので」。三木社長は単一店舗のコンビニオーナーだった十年前を振り返る。
定期的に開かれるMO同士の会議で、他の加盟店のオーナーと知り合うことができるのも魅力だ。「アルバイトの給与や賞与をどうするか、人材はどう育てるのか。MOの知り合いが数十人できて、困ったときには相談できる」(三木社長)
家族経営だったイージスリテイリングは、現在社員20人、アルバイト・パートも含めれば240人を抱える規模にまで成長した。今後は30店舗の運営を目標に掲げる。「独立心を持った社員もいる。複数店の運営もできるような人材を育てていきたい」。三木社長は少し照れくさそうに語った。
コンビニの事業モデルは転換期
MO制度の導入は2010年と少し前のことだが、開始6年でMOの人数は160人、運営店舗数でいうと約1600店にのぼるまで増えた。ローソン8店にうち1店は、MOが経営にあたっている計算だ。
制度が軌道に乗るのにつれて、内容も少しずつ追加。MOの権限はさらに広がってきた。たとえば、2016年から、本部が加盟店を招いて開く商品説明会では、本来新商品の説明にあたる本部社員ではなく、MOが経営する加盟会社の社員が説明役を務めた。
コンビニのビジネスモデルの構築を先導してきたセブンイレブンでさえ、加盟店同士が知恵を出し合って店舗運営を改善していくという新たな取り組みを始めている(カリスマなきセブン、密かなる大改革参照)。コンビニというビジネスモデルが誕生してから40年。冒頭に書いたようにコンビニに関するニュースが多く、しかも大きな注目を集めるのは、日本で暮らす人々のライフスタイルにコンビニが寄り添い、その存在感が大きくなっているからだろう。
一方で、ブラックバイト問題など社会インフラとしてのコンビニをどう維持していくのか、という問題が顔を見せるようになってきているのも確か。コンビニというビジネスモデルが、一つの転換点を迎えていることは間違いない。ローソンの取り組みは、その解のひとつとなるだろうか。
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