たとえばコンビニで売られているビニール傘。雲ひとつない秋晴れの日中と、スコールを思わせる土砂降りに見舞われた夕暮れどきとでは、私たちがビニール傘に感じる価値の大きさは違うはずだ。

 もっとも、だからといって土砂降りの日にビニール傘を買おうとして、店員さんに「雨が降っているので現在3000円です」と言われたらどうなるか。

 私なら「それは高い! ワンコインとは言わないけれど、せめて1000円くらいにならないですか」と言いたくなるだろう。すると店員さんも「2000円は譲れないですね」と応酬し、最終的に1500円あたりで決着する……。

 そんなやりとりが繰り広げられるだろうか。想像するだけでも、かなり面倒なことになりそうだ。それなら、客と店側がギリギリ折り合える水準である「1500円」を、AIが最初から提示してくれたほうが楽というものだ。

天気によってビニール傘の値段が変わる日が来たら……

「お店にうまくやられた」と感じる?

 個人的に気になるのは、ダイナミック・プライシングの導入により、消費者が「私は損しているんじゃないか」と企業側に不信感を抱くことが増えるのではないか、ということだ。

 ビニール傘の例でいえば、晴れの日なら1000円以下で手に入るであろう商品が、その雨天時には1500円を出さないと買えないことになる。

 晴れの日には今より割安になるのかもしれないが、晴れの日に傘を買おうと思うことは少ない。最も傘を必要とする雨天時には今より割高になるわけだから、客としては「お店にうまくやられた」と感じてしまうかもしれない。

 AIは過去のデータを分析し、人間に代わって最適な答えを総合的に導き出す。どんなデータを用いて、どのような基準で判断したのかはブラックボックス化されており、企業側も分からない。ある意味で値決めの根拠は不透明といえる。客は「ぼったくられた」という感情を抱くことになりかねない。

 そんなのは慣れの問題……。そう主張する人もいるかもしれない。たしかに、飛行機やツアー旅行の代金が繁忙期に高くなっているからといって、文句を言うひとはいない。需要と供給の関係を反映した変動価格なら、慣れさえすれば、私たちもそれを当然のものとして受け入れるようになるかもしれない。

 では、その時々の需給だけでなく、購入者の属性によっても価格が変動するとしたら、私たちはどう感じるだろう。