カメラやサーモカメラは一般的なもの。AIは「一部独自の部分もあるが、特殊な技術ではない」(パナソニック)という。だが、担当者は「AIに機械学習させるデータの“質”にこだわった。『軽蔑している』など読み取りにくい感情はあるが、高精度で分析できる」と胸を張る。

 ドライバーの「眠気」や「不安」を検知、小売店で顧客の「好み」を分析しマーケティングに活用、パソコンに取り付けて社員の「ストレス」を見える化、消費者の「イライラ」を検知できるスマートフォン――。パナソニックでは幅広い分野での応用を見込んでいるという。

 スマートフォンに搭載されている加速度センサーを使い、組織の「幸福感」を計測しようと試みるのが日立製作所だ。人の動作と作業の効率性などの相関から独自の指標「幸福感」(組織活性度)を導き出す。18年1月から実証実験を開始する考えだ。

 具体的には、加速度センサーで測定した動きから作業の効率性を分析し、これを社内で実施した幸福感のアンケートと照らし合わせる。15年には加速度センサーを搭載した専用のカード端末を開発していたが、今回スマホでも測定できるようにした。カード型端末とは違い、常に身に着けていない部分は「AIを使って機械学習させることで補っている」という。

場の雰囲気までを分析

 電子部品メーカーでは村田製作所が、場の雰囲気や盛り上がり、人間同士の親密度といった目に見えない情報に着目。同社はこれを「仮想センサ」と名付け、売り込んでいく計画だ。

 村田がシーテックのデモで使用するのはマイク。会話の大きさや量などの音声データから特徴点をクラウド上で分析し、「空間の雰囲気や活況度合いがポジティブなのかネガティブなのか判断していく」(同社の担当者)という。

村田製作所の「仮想センサ」のデモの様子

 こうした情報を飲食店や小売店に提供することで、接客サービスの向上につなげる取り組みを補助していく考えだ。「マイク以外にも様々なセンサーを活用することで、幅広い業種に情報を提供できるようになる」と担当者は話す。

 カメラにマイク、加速度センサー……。想定する用途に応じてセンサーを使い分け、人の感情をセンシングしようと試みる電機・電子部品大手。単純に物理量を測定するセンサーではなく、得られたデータを分析して新たな価値提供を目指すのは「単純な部品売りでは付加価値を打ち出すのが難しくなっている」(村田製作所)という危機感があるからだ。

 さらにクラウド上にある多種多様なデータ分析は「システム会社など、あまねくIT企業が取り組んでいるレッドオーシャンだ」(パナソニック)。センサーとデータ分析を組み合わせることで付加価値を高めていくのは、ハードを手掛けてきた電機・電子部品にとって、IT大手に対する優位性を維持するために必然の取り組みと言える。

 それにしても、人の感情がどんどん読み解けるようになる近未来には、どのような生活が待っているのだろうか。職場での潜在的なストレスがあぶり出されたり、リアルタイムに接客などに生かせたりするのは歓迎すべきことかもしれない。しかし、家族や恋人、友人関係にまでITを駆使して接するようになるのは、個人的には避けたいところだ。