禁輸措置はGATTに抵触?

 水産庁によると「中国政府の中でもIUUに関する懸念は高まっている」(国際課)。中国がEU(欧州連合)とIUU対策に関するワーキンググループを結成するといった具体的なアクションもある。しかし、自国のEEZ内の資源保護に直結する沿岸漁業の対策が優先で、日本を含む他国へのEEZへの影響が大きい遠洋漁業でのIUU対策は、後回しにされるのではないだろうか。

 外交においてIUU漁業は自然保護の問題ではなく漁業の産業育成の課題であり、中国当局にIUU対策を促すには、同国産業の利害につながる動機付けを示す必要がある。これに関してはEUの取り組みが参考になる。

 連載記事でも説明した通り、IUUの対策が最も進んでいるのがEUだ。IUU 対策が不十分と認定した国には魚介類の禁輸措置も言い渡す。EUはこれまで6カ国に対し禁輸措置を実行している。

 日本も中国にこうした厳しい姿勢を取ることが対策として考えられる。魚食の需要が右肩下がりの日本だけでは中国の包囲網を築くには不十分かもしれないが、EUなどと連携して禁輸措置のカードをちらつかせれば効果はあるだろう。

 しかし、GR Japanの粂井真マネージャーは「今の日本がIUU魚介類の禁輸措置に踏み切れば、WTO(世界貿易機関)の内外無差別原則に抵触しかねない」と指摘する。WTOはGATT(関税及び貿易に関する一般協定)で、輸入品への規制に関し「国内原産の同種の産品に許与される待遇より不利でない待遇を許与される」と定めている。つまり、国内でIUU魚介類の流通防止を十分にしていないのに、徒な禁輸措置はできないということだ。

EUに劣る日本の漁獲管理

 EUの場合、「漁獲証明書制度」と呼ばれる域内の制度が対外的に禁輸措置に踏み切る裏付けになっている。漁獲時、水揚げ時、販売時にそれぞれ日にちや漁法、漁獲量などを当局に報告し、魚介類のトレーサビリティーを確立。IUUに当たらない魚介類であることを確認し、証明書を発行する。同様の制度は米国も既に取り組み始めている。

 一方、日本はEUのように厳密にIUUを排除する仕組みを持っていない。漁業協同組合などを通じた漁業者同士の自主規制による管理が日本の主流だ。「日本は漁船がIUU船と国際的に認定されたことはない」(水産庁資源管理部)が、資源現象が危惧される太平洋クロマグロの無許可漁獲が相次ぎ発覚するなど、問題が全くないわけではない。自主規制が機能しているかは地域により大きな差はあるが、国内でも不正が起きている以上、自らの襟を正さねば禁輸措置に軽々には踏み切れない。