自社よりも地域名が大きい看板

 もうひとりのリーダーは齋藤代表理事のように都会からの移住組ではない。生まれ育った故郷を活性化すべく取り組むのが福岡県大川市にある関家具の関文彦社長だ。

 大川市といえば家具の町。全国に家具の名産地は13ほどあったが、徐々に減り半減した。大川市も1999年に651億円あった家具の生産額は、2013年には282億円にまで減っている。人口減少も止まらない。1970年に5万1637人をピークに減り続け、2015年は3万7000人。2060年には1万7000人にまで減る推計すらある。

 そんな関社長は大川市を盛り上げようと世話を焼く。福岡ソフトバンクホークスの本拠地、ヤフードームのバッターボックスの後ろに「大川の家具」と目立つ広告がある。出稿しているのが関社長だ。時に自社よりも地域名の方が大きいこともある。「地元が活気づけばそれで良い」(関社長)。

 自社工場で若手職人を育成するために、新卒学生を積極的に採用する。以前には事業継続が困難となった地元の婚礼家具メーカーを買収したこともあった。

 地域活性化に精力を注ぐ一方で、関家具は48期連続黒字だ。店舗は東京など各地にあるが、本社機能を福岡県大川市から移転させるつもりはないという。関社長は「しっかり稼いで故郷に納税することが使命。だから大川を離れることはない」と考える。個人的にも地場の飲食店でお金を使い、法人税もしっかりとおさめる。

 大川市は家具の展示会が年4回行われ、金具やねじなど材料問屋もしっかりとある。倉庫の費用は都内と比べると10分の1。関社長は「この田舎こそが良い立地。固定費が低いし家具に必要な材料は何でもそろう。大川以外に考えられない」と話す。

 産業基盤を強固にするために新たな売り方を模索する。関家具の顧客リストには富裕層も多いことから高級家具の製造に力を入れている。4月には4320万円のテーブルがあっという間に売れた。希少なイチイを使った6メートル超で継ぎ目のない一枚板。イタリアからの観光客が購入した。ほかにも1000万円超のテーブルが売れている。「いま計画している商品の売り値は8000万円を超えるだろう。家具が趣味の人に価値をしっかりと提供できれば、どんなに高くても売れる」(関社長)。

 こうした新しい売り方を提案することで、家具の町を活性化させようとしている。地方創生に向けた人材育成をするにはハコモノ行政のように、土木業者が潤い、地域経済が潤いだすといった即効性はない。だが時間はかかるものの人材育成に時間をかければ、産業が根付く。地方ほど団結力は強いと言われている。小さな気付きが変化を促し、大きく変わる可能性を秘める。おせっかいで世話好きなリーダーを育てることが、地方創生の近道となりそうだ。

関家具の関文彦社長。後ろに並ぶテーブル用の材木は一品モノばかり。(撮影:松隈直樹)