都心攻勢で磨かれるセンスと編集力

 今年4月、愛媛県今治市に開業した「イオンモール今治新都心」を訪れ、その中にある「イオンスタイル今治新都心」に足を運んで、驚いた。これまでのような画一的で味気ないイオンとはまったく違う売り場が広がっていたからだ。デパ地下風の陳列がなされたデザート売り場や、洒落た専門店のようなベーカリー売り場、できたての総菜が見栄えよく並ぶデリカ売り場を抜ければ、バーのような雰囲気の中でワインが試飲できる「イオンリカー」がある。これまで、イオンのGMSに対して抱いていたイメージが大きく覆された。

 イオンは数年来、苦戦が続くGMS事業の抜本的な改革を実践している。中でも新業態の「イオンスタイル」は、これまでの画一的な売り場を改めて専門店のような売り場を組み合わせたり、編集したりして、ライフスタイルそのものを提案するような業態を目指しているという。

 仮に碑文谷店でも、こうした工夫ある売り場が作られるのでれば、以前のダイエー碑文谷店よりも格段に面白い店舗になるのではないだろうか。ダイエー碑文谷店は食料品は強かったが、3階以上の衣料品や住居用品については、ほかの一般的なGMSと同じような、いわゆる「普通のGMS」だった。

 それがイオンスタイルになることでどのような変貌を遂げるのか。碑文谷という立地を意識すれば、当然ながら、地方にあるイオンスタイル以上に売り場の編集力などを高めるはずだろう。碑文谷にイオンが出ることで、イオンスタイルそのもののセンスや編集力も磨かれるのではないだろうか。

 ニトリにも同じようなことが言えるはずだ。

 かつてのニトリの売り場には、いかにも郊外のロードサイド店で扱っているような商品ばかりがずらりと並んでいた。けれどある時から、クッションやシーツなどのファブリック類、食器や調理器具などのキッチン用品、さらにはちょっとした収納ボックスなど、少しずつ磨かれてきたのだ。郊外から都心部への攻略を進める過程で、ライバルのIKEAや雑貨チェーンのフランフランなどを意識したのではないかと推察している。

 ニトリ中目黒店のオープンから2カ月後の11月中旬、今度は中目黒駅近くの高架下に、カルチュア・コンビニエンス・クラブの展開する「中目黒 蔦谷書店」がオープンする。複合商業施設として高い集客力を誇る「代官山 蔦谷書店」に続いて、中目黒にも進出するのだ。中目黒の店舗は、代官山とは違う切り口にするそうだが、それでも代官山で培った空間演出力をふんだんに生かした売り場となることは間違いないはずだ。

中目黒蔦谷書店も、採用向けの専用サイトを設けている

 こうした店舗と切磋琢磨しながら、ニトリは中目黒で戦うことになる。その過程で売り場の編集力や商品のセンスなどは、一層磨かれていくはずだ。

 かつて注目を集めた高級家具店の跡地にニトリが入り、一つの時代とブランドを築いたGMSはイオンに変わる――。これだけ聞くと、「デフレの波が都心に押し寄せた」と解釈するかもしれない。もちろん、そうした面もある。けれどもおそらく、今後都心部にオープンするニトリやイオンは、デフレの象徴として安さだけを強調したような売り場とは違うものになるはずだ。

 都心の商業施設が今後、どのように進化を遂げるのか。それを先取りするのが、この秋以降目黒区に開業するいくつかの新店舗なのだ。