似鳥会長「ようやく我々を理解してもらえた」

 雑貨店「フランフラン」などを展開するバルスは、2000年代、雑貨チェーンの高級業態として「バルス」を新宿や中目黒に展開していた。売り場で扱うのは高級家具や値の張る雑貨などが中心。中目黒店はその旗艦店という位置づけでオープンした。

 開業当初は、フランフランの高級業態と注目を集めており、私も取材で何度か店舗を訪れた。ただ高級業態というだけあって、家具や雑貨のいずれも値が張り、気軽に買ってみようと手に取れる商品はあまりなかった。プライベートで時々、売り場を訪れても、気楽に買えるような商品は少なく、客足も決して多くはなかった。正直、成功しているというような印象は受けなかったのだ。

 そんな高級店がついに閉店し、その跡地に入るのが郊外のロードサイドで実績を積んできたニトリなのだ。小売業界の昨今の勢力図の変遷を象徴していると言えるだろう。

 似鳥会長は、「あそこにバルストウキョウだったころにも何度か見学に行ったことがある」と明かす。「こんないい場所なのにもったいない。うちが出たら…と前から思っていた」と打ち明けた。似鳥会長の思いが通じたのだろうか、ようやくその跡地に、ニトリ中目黒店が開業することになった。

 高級住宅街とも言われる中目黒の一等地にニトリが進出することに、戸惑う地元住民も確かに存在する。けれども半面、ニトリを歓迎する声も多い。「バルスよりも格段に便利になる」と期待を寄せる声を、私は何度も聞いてきた。私自身、バルストウキョウには数年に1度しか訪れなかったけれど、ニトリであれば、こまごまとした生活必需品を買いに行けるようになるので、正直とてもありがたい。

 中目黒店の開業について似鳥会長は、「ようやく我々のことを理解してもらえるようになった」と思いをはせる。「かつては家賃の高い場所だと、無印良品やユニクロには声がかかっても、我々ニトリに出店の打診が来ることはなかった。けれどもようやく『出店してもらいたい』と言ってもらえるようになった」(似鳥会長)というのだ。特に来年以降、こうした都心部への進出を加速させるという。

あのダイエー碑文谷店は…

 もう1つの注目店舗が、今年12月に開業を予定している「イオンスタイル碑文谷(仮称)」だ。こちらは今年5月まで、「ダイエー碑文谷店」として41年営業を続けた店舗を改装して、新たに開業する計画だ。

 目黒通り沿いのダイエー碑文谷店と言えば、かつての小売り最大手だったダイエーを象徴する店舗。近所に総合スーパー(GMS)が少ないこともあり、地元住民にも重宝されていた。地上7階建てで、1~2階で食料品や飲料などを扱い、3階以上で衣料品や日用品、住居用品などを扱っていた。

 当初は大型ボウリング場として建設が始まったが、ボウリングブームの終焉によって計画が断念されて、代わりにダイエーが入ったという。それから41年。ダイエーそのものは安さを売りにした小売りチェーンだったが、碑文谷店は、高級住宅街の中にあったためか、生鮮品の品揃えの幅広さや鮮度などにも定評があり、近隣住民らの評判も高かった。

 ここ数年は、同じ目黒通りのダイエー碑文谷店のすぐそばに、より安くて新鮮な生鮮食品を扱う中堅スーパー「オオゼキ碑文谷店」が出店。客足がオオゼキに流れたため、ダイエー碑文谷店は苦戦を強いられていたという。

 その後、ダイエーは2015年にイオンの完全子会社となり、イオン傘下のイオンリテールがダイエーの旗艦店などの営業を譲り受けることになった。そして今年5月、ダイエー碑文谷店は41年の歴史に幕を閉じた。耐震補強工事などを経て、今年12月にはダイエー碑文谷店が、イオンスタイル碑文谷店(仮称)として新たにオープンするという。

イオンスタイル碑文谷の開業に向けて、採用サイトを設けている

 ダイエー碑文谷店と言えば、東急東横線の学芸大学駅を中心に、その周辺に住む人々にとっては地域を象徴する店舗であり、地元で長く愛されてきたGMSだった。「日本一、芸能人が出没するスーパー」とも言われ一つのブランドを築いていた。その跡地にイオンが出ることに戸惑う声もいくつか聞いた。

 ただ、私はそれほど心配していない。というかイオンスタイル碑文谷店(仮称)の開業を心待ちにしている。