目黒区民の私は、最近少しそわそわしている。この秋以降、自宅の近所に生活の質を左右しかねない店舗が相次いで開業するからだ。大げさな表現だけれども、数年来、小売りチェーンの動向を取材してきた私にとって、これから近所でオープンするいくつかの店舗は小売り業界の勢力の趨勢を象徴するものだと実感している。

 1つ目の店が本日オープンする家具チェーン「ニトリ」の中目黒店だ。

 9月16日、東急東横線中目黒駅から5分も歩かない場所に、ニトリ中目黒店がオープンする。城南エリアに住む人であれば、「山手通りと駒沢通りの交差点の角」と表現する方が分かりやすいかもしれない。交通量の多い、目立つ場所である。

9月16日にオープンするニトリ中目黒店。

 郊外のロードサイド型店舗を主力とするニトリが、都心部にも店を構えるということだけであれば、単に「ニトリの都心攻略が進んでいる」という感想くらいしか抱かなかったかもしれない。

 事実、ニトリはこの数年来、積極的に都心部に進出している。2015年にはプランタン銀座内に店を構え、当時の都心攻勢にかけるニトリホールディングスの似鳥昭雄会長(インタビュー当時は社長)の思いは、日経ビジネス本誌や日経ビジネスオンラインでも取り上げている(詳細は日経ビジネス2015年7月13日号特集「ニトリ、銀座へ 始まった都心争奪戦」、日経ビジネスオンライン「ニトリが銀座に出店したワケ」など)。しかもプランタン銀座内の店舗は、現在は6階だけの1フロアだが、集客力の高さが評価され、もう1フロア増床するという。

 1年前のインタビューの中で、似鳥会長は「5年ほど前から『ニトリに買い物に行きたいのに、店が近くにない』という声が、都心に住む消費者の方から届くようになっていました」と語り、この数年は、ニトリにとって空白地帯だった都心とその周辺に出店を重ねていると明かしている。中目黒店もその一環と考えれば、開業そのものは決して珍しいものではない。

 けれども、ニトリ中目黒店の開業にはもう1つの大きな意味がある。店舗を構えるのは、もともと高級家具チェーンの「BALS TOKYO(バルストウキョウ)」跡地なのだ。