それでも、3候補の記者会見や討論、演説を聞いていると、いずれも弁舌はさわやかで、高い発信力を有していることは伝わってくる。

 前原氏はすでにベテランの領域だが、自民党内から「民進とうちの党の中堅、若手議員を比べると、民進の方が人材豊富で優秀だ」といった声があがるのもうなずける。

理念や政策だけで政治は動かない

 では、なぜ野党第1党の民進への期待が広がっていないのだろうか。

 前原氏が語るように、「政権交代」の1点で実現した民主党政権がその後内紛続きで自滅し、今なお有権者の間に根深い不信感が横たわっていることが大きいのは確かだ。民進内では憲法改正や安全保障政策など主要政策を巡って溝が残り、グループも細分化したまま。「いつまたゴタゴタが起きてもおかしくない」との指摘もよく耳にする。

 もう1つ挙げておきたい点がある。政治は人の営みであり、理念や政策を掲げるだけでは進まないということが依然として軽視されがちなことだ。そのことが、結果的に党全体の地盤沈下につながっている気がしてならない。そんなことを改めて思ったのは、今回の代表選の候補擁立に向けた作業の最中、象徴的な出来事があったからだ。

 「代表選出馬を考えている。公約の素案をまとめたので、目を通してもらい、意見を聞かせてほしい」。あえて名前は伏せるが、政策通でならす民進議員からこのような連絡を受け、事務所をたずねた。政策の出来映えは正直悪くない。それはいいのだが、気になるのは推薦人が集まるかどうかだ。

 「これからしっかり頑張る」。その言葉に不安を感じながら事務所を後にしたが、数日後、案の定、この議員から出馬断念の連絡があった。

 要は、推薦人になってくれると見込んでいたほとんどの議員が勝ち馬に乗ろうとほかの陣営に走ってしまったのだ。この議員や秘書はショックを隠さないが、政策に磨きをかければ支援を受けられると信じていたとすれば、認識が甘すぎたというほかない。