AIで事業リスクを予測

数人の気象予報士が3交代で24時間365日常駐する

 気象予測の情報提供だけでなく、データを基に、顧客企業の事業にどのような影響が及ぶのか、リスクを軽減したり、天気を味方につけて収益アップにつなげたりするにはどうすればいいのかも指南する。膨大な気象予測データの分析には、AI(人工知能)を応用した意思決定支援システム「ワトソン」を使い、提案の精度を高める。

 気象ビジネスはもはや、ビッグデータ解析やAIといった最先端のITの技術力を競う舞台になっている。巨大な資本力と人的・技術的なリソースを持つIBMの参入を受けて、国内の大手気象予報会社の幹部は、「まさに黒船。強力なライバルが現れた」と危機感をあらわにする。

 気象予測のデータを活用することで、幅広い業種で損失を回避したり、売り上げや利益を引き上げたりすることができる(下の表)。

●気象予測データの活用例
業種 活用例
小売業 気象予測を基に商品の需要を予測し、ロスの少ない在庫計画や効果的な販促活動を実施
自治体 自然災害を事前に予測し、被害を最小化。災害発生時に迅速に対応できる準備を整える
製造業 天候による製品の需要予測/自然災害による原料や資材の調達リスクの把握
農業 気温や雨量の予測などを基に、植え付け・施肥・収穫などの時期を見極め、品質を引き上げる
損害保険 自然災害などの警戒情報を契約者向けに配信/気象リスク評価に基づく保険商品を開発
医療・医薬 気温や湿度による医薬品の効き目の違いを分析
航空・海運 風速や潮流などの予測に基づき、安全で速いルートや最適な運航スケジュールを見極める
電力・ガス 気温の予測を基に燃料の調達計画を策定/自然災害を予測し安定供給の体制を整える
建設 悪天候による工期遅延リスクを把握し、工事計画の見直しや作業員の安全確保を図る
異常気象が当たり前になり様々な業種で「情報武装」が始まっている

 例えば、米国の航空会社の事例では、飛行ルート上の気流の状況を正確に予測できたことで、航空機が乱気流に巻き込まれることが大幅に減った。機体にかかる負担が減ったことで保全検査を4割減らすこともできた。機内で乗務員が転倒して負傷するといった事故も半減。さらに、飛行ルートの先々の天候状況が詳細に分かるようになったため、天候不順の際に「念のため欠航にしておく」といったことが減り、欠航の便数も11%減ったという。

 気候変動が進み、異常気象が「異常」でなくなる世の中が、もうそこまで来ている。自然に身を任せるのではなく、自然の挙動を正確に把握・予測し、対応することが企業にとってますます重要になっている。事業リスクを最小化する「盾」として、天気を先読みして商機につなげる「矛」として、気象データが企業の「情報武装」の要になる日も近そうだ。