北海道は確かに国内有数の農業地だが、冬は雪に閉ざされる地域が多い。夏場も冷涼な気候で、育つ農作物は限られるのではないか――。読者からはこんな意見が聞こえてきそう。だが横山氏は「温暖化が北海道にはプラスに働く」と指摘する。要するに気候が暖かくなることで耕作に適した土地が増える。農作物を生産できる期間が長くなり、その種類や収量も増やせるというわけだ。平均気温の上昇で「北海道は人が暮らしやすい状況に近付いている」とも横山氏は話す。

 世界を覆う温暖化は、九州など南日本の農業地ではマイナスに働く可能性がある。だが農作物の品種改良の技術は年々進歩している。高温障害を防ぐ農作物の開発が進んで普及すれば、生産量が落ち込むことはなさそうだ。

 「北海道の食糧基地としての存在感が高まる」という横山氏の主張を裏付けるように、北海道での農業の幅は近年、広がりを見せている。その一例がコメだ。

「猫またぎ」も今は昔

 固有の品種はこれまでにもあったが、味の悪さから「猫またぎ」や「やっかいどう米」などと皮肉られることが多かった道産米。品種改良が進んだうえ、温暖化による栽培環境の好転も追い風となり、2009年に一般販売が始まった「ゆめぴりか」をはじめ、食味の良いコメが収穫できる地域が広がった。日本穀物検定協会の2015年産米の食味ランキングでは、「ゆめぴりか」「ななつぼし」「ふっくりんこ」の道産米3品種が、新潟県魚沼産コシヒカリと同じ最高ランクの「特A」に選ばれた。

 農業の将来性を見越して、北海道ではいま新規参入が相次いでいる。北海道によると、農家以外の出身で新たに就農した「新規参入者」の数は2015年に126人。ここ20年で最も多くなった。その約4割を関東、近畿など道外の出身者が占める。全国各地、特に人口の多い都市部から北海道に若者たちが続々と集まっているのだ。

 農業を軸にした北海道の明るい未来予測。地元出身の横山氏が話している分、北海道に多少ひいき目になるのは差し引く必要がある。それでも世界の政治潮流と気候変動を結び付けた独自の予測は興味深かった。

 私自身は北海道の出身ではないが、幸運なことに、これまでの人生経験を通じて北海道との縁を深める機会に恵まれてきた。これからの北海道は「人気の旅行先」や「転勤族の憧れの地」という位置付けにとどまっていては立ち行かない。日本の未来を明るい方向に導くフロンティアとして、北海道で一旗あげようという気概を持った人が農業分野や、他の産業でも続々と現れることを期待したい。