アップルの「iPhone」への採用を控え、開発競争が活発化する有機EL。経営危機のジャパンディスプレイも経営トップの大号令で、有機ELシフトを急ぐ。量産技術の「壁」を超えるためにも、これまでにない大胆な仕掛けが必要になりそうだ。

ジャパンディスプレイは曲げられる有機ELディスプレーの開発を急ぐ

 依然として残暑が厳しいなか、エレクトロニクス業界ではこれから秋に向けてイベントが盛りだくさんとなる季節を迎える。8月末にはひと足早く韓国サムスン電子が米ニューヨークで新型スマートフォン「ギャラクシーノート8」を発表。9月1日(現地時間)からはドイツ・ベルリンで欧州最大の家電見本市「IFA」、そして日本でも10月上旬に千葉市でエレクトロニクス関連の見本市「シーテックジャパン」が開かれる。

 いずれも規模の大きなイベントだが、記者が最も注目しているイベントは米アップルが9月12日(米国時間)に開催予定の新商品発表会だ。10週年を迎える「iPhone」の新モデルの上位機種には、有機ELディスプレーが搭載される見通しだ。

 記者が注目するのは、単純に「アップルの新商品だから」、「有機ELを採用して機能が進化するから」というワケではない。同社が採用した新技術が、競合他社の新商品開発にも大きく影響を及ぼすためだ。

 スマホ表面を保護する強化ガラス、肉眼では画素が見えないほどの高精細ディスプレー、そしてタッチセンサー機能内蔵液晶――。アップルはこれまでもiPhoneに最先端のディスプレー技術を他社に先駆けて導入してきた。中国勢など他社が追随することで、これらの技術はスマホの標準機能となってきた歴史がある。

 今回、iPhoneのディスプレーが液晶から有機ELに変わることで、中国スマホメーカーが有機EL採用を加速するという業界関係者は多い。国内のあるディスプレー幹部は「中国勢はアップルがどんな外観に仕上げてくるのかを見極めようと、一時的に液晶の発注をストップしている」と明かす。

5年越しで有機EL強化

 そんな新型iPhoneの有機ELシフトに危機感を強めるのが、経営再建中の液晶大手ジャパンディスプレイ(JDI)。最大顧客であるアップルが液晶から有機ELに全面的に切り替えれば、業績への打撃は避けられないからだ。

 8月9日には人員削減や工場の統廃合を軸とした構造改革計画、スマホ向け有機ELの開発強化を軸とする中期経営計画を発表した。有機ELについては、19年半ばをメドに量産技術を確立し、20年には本格量産に踏み切る計画だ。7月3日には社長直轄の有機EL量産化プロジェクトチームが発足し、研究開発や設計など各部門から約400人が集められ、突貫工事で量産技術確立に動いている。さらに、海外企業との提携で有機EL事業を拡大していく考えだ。