復旧にあたった東電EPガス事業部の結城達也部長代理は、「いち早く復旧の手助けをしたかったし、自分たちとしても初めての他地域での作業で大きな経験になった」と振り返る。両社が担当した作業は、復旧したガスの開栓作業だ。復旧すると急に電気がつく停電とは違い、都市ガスは安全面から1戸ごとに訪問し、住人の立ち合いのもと各戸のガスメーターを操作して開栓する作業が必要になる。

 応援にあたってまず決めたのは、何人送るかだった。こうした復旧作業の訓練を受けている人員には限りがある。さらに関東での自社の業務もあるため全員は送れないし、作業日数が伸びた場合の交代人員も確保しておく必要がある。両社とも5人派遣することにした。担当者は急いで水や簡易的な食事、作業ユニフォームを携えて大阪へ向かった。

 集合場所は大阪府吹田市にある万博記念公園の駐車場だった。新幹線で新大阪駅まで移動し、レンタカーを借りてそこから万博記念公園まで向かった。その中で東電EPやニチガスの担当者が感じたのは、大阪ガスの手際の良さだった。大阪・梅田でレンタカーを借りる手配や、復旧まで宿泊する宿の手配、お弁当の配布など、地震直後の中ですぐに用意されていた。「こういう場合にどんな用意が必要なのか勉強になった」(東電EPガス設備・保安グループ久保田淳課長代理)。

 翌日の朝、万博記念公園に集合した担当者は顧客名や住所、IDが書き込まれた表を渡された。この表に書かれた住戸を訪問し、開栓する。5人を2チームに分けて分担したが、初めての場所だけに戸惑ったことも多かった。例えばどう住戸を回るかだ。担当者はみな関東在住なので大阪に土地勘はない。どう回れば効率的なのかが瞬時に判断できないのだ。住所が違うが、実は隣接している地域だと後で分かったということもあった。

 地域が広く、6月で既に暑くなっている時期でもあり、徒歩で回るのに一苦労だったことも、初めてならではの経験だった。「他の事業者が自転車を用意しているのを見て、なるほどと思った」(東電EP久保田課長代理)。

2700人が他地域から応援に駆け付けた(東京電力エナジーパートナー提供)
2700人が他地域から応援に駆け付けた(東京電力エナジーパートナー提供)
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自分の地域で災害が発生した時の「訓練」に

 さらに住戸を訪問しても、留守が多かったことも想定外だった。復旧作業にあたったニチガスエネルギー事業部保安推進課の松本浩司課長は、「鉄道が翌日には復旧していたので、会社に出勤されていて、不在が多かった」と振り返る。不在の場合は宅配の場合と同様に不在票を投函し、後日来てもらいたい日を連絡してもらう仕組みになっている。

 作業当初の紙には再訪問の受付の電話番号しかなかったが、途中からQRコードでサイトから入力してもらう方法が加わった。「おそらく当初は不在が多かった分、電話が殺到したのでは。こうした際の電話回線数の準備も必要なのかもしれない」(ニチガス森下淳一常務取締役)。

 作業を終えた、不在だったなどのステータスは、訪問した担当者が住戸ごとのIDをキーにして、スマホ経由で大阪ガスのシステムに入力することで管理している。そんな中、朝渡された表にしたがって未開栓の住戸を訪問したが、すでに開栓済みの住戸に何度も遭遇したという。「住戸を回っているときに、『ウチのもなおしてよ』と自分の担当範囲外の復旧を依頼されることもあった。もちろん断ることはしない。同様のことが他の担当者でもあり、自分の担当住戸がすでに開栓済みになっていたのだろう」(ニチガス松本課長)。

 朝から晩まで何十件もの住戸を訪問するのは、肉体的、精神的にも疲労がたまる。1週間ほど経ち、そろそろ限界が見えてきた。担当者の交代が必要か検討し始めたころにちょうど復旧作業の終了が大阪ガスから告げられた。

 以前、新潟県中越地震が起こった際に、中部地方の製造業の担当者が復旧ボランティアで数多く駆け付けたという話を聞いたことがある。被災した地域に役立つ面もあるが、東海地震に備えた訓練の意味も大きかったという。当然、地震はないに越したことはないが、今回の東電EPやニチガスによる復旧支援作業は、人口を多く抱える関東地方においても大きな意味があったのではと思う。