外国人旅行者を観光地に呼び寄せるのに問題となるのが、宿泊施設側の対応だ。個人旅行客は直接、ホテルや旅館に予約を入れることが多いため、英語などの外国語で予約できないと来てくれない。

 城崎温泉の旅館の場合、米エクスペディアやオランダのブッキング・ドットコムなど欧米の旅行・ホテル予約サイトとの連携を深めたことで、欧米の個人客の取り込みに成功した。以前は日本語でもオンライン予約に対応していなかったタイプの小規模な旅館でも、かなりの数が欧米のホテル予約サイトに登録している。

 15年には豊岡市も城崎温泉に関する英語の観光情報サイト「Visit Kinosaki」を立ち上げ、宿泊予約機能を装備した。今ではフランス語にも対応する。サイトはトップ画面に大きなイメージ画像を配し、滞在日と人数を選んで予約するためのメニューが中央下部に表示されている。最近の欧米の予約サイトに見られるようなページデザインで利用者にとって旅館の予約がしやすいよう工夫している。

 さらに外国人旅行者を呼び込むために16年6月に発足したのが豊岡版DMO「豊岡観光イノベーション(一般社団法人)」だ。DMOとは「Destination Management/Marketing Organization」の略。観光地経営組織などと訳される。観光地において戦略の策定、各種調査、マーケティング、商品開発、プロモーションなどを一貫して実施する組織体で、欧米の観光地で発展した形態だ。

 日本では地域の観光は、自治体の観光課や観光協会、地域の旅館組合などの組織が情報提供やプロモーションをするケースが多いが、ツアーなどの商品を開発したり、調査を基に戦略的なマーケティングを展開するなど企業的な動きまではこれまでほとんどしてこなかった。

 そこで豊岡市では企業と連携してDMOを組織した。高速バス大手のウィラー(大阪市)や地元のバス会社、全但バス(兵庫県養父市)、豊岡市に本店がある但馬銀行、但馬信用金庫などの企業が基金を拠出、旅行大手のJTBと三井物産はそれぞれ社員を派遣して参画する。観光地としての関連性が強い隣接する京都府京丹後市とも連携する。社員は9人で、7人が企業出身者だ。今年4月からは旅行大手の近畿日本ツーリストも社員を派遣している。

 具体的にはマーケティング事業、現地ツアーの開発・販売、前述の宿泊予約サイト「Visit Kinosaki」の運営などを手掛けている。

 三井物産から加わり事業を統括する田辺茂・事業本部長は「城崎温泉の集客をさらに伸ばすことに加え、豊岡市と京丹後市の城崎温泉以外の観光地への集客に取り組んでいる」と話す。

一般社団法人豊岡観光イノベーションで事業を統括する田辺茂・事業本部長。三井物産からの出向で、台湾などでの駐在経験がある

 豊岡市には城下町の出石地区などの観光地が点在する。海水浴ができる風光明媚な海岸もある。