三菱重工で造船を統括する大倉浩治執行役員は「提携を実行するうえで資本関係を持つ必要があるとは考えていない」と事業統合にまで発展することには現時点で否定的。ただ「開発・設計のスピードアップなどで各社が強くなり事業規模を拡大できれば、リソースを提供する三菱重工にとってもメリットが出てくる」と話す。提携が身を結べば、祖業ともいえる造船事業を三菱重工が一定の形で継続していく大きな柱となる可能性がある。
 半面、造船業界では「開発・設計と現場の建造をうまく分担できるのか」と疑問視する声も少なくない。それらは密接に関係した業務であり、別会社同士が率直な関係を築けるのか、という指摘だ。これに対し大倉氏は「これまでも個々の案件で、三菱重工が開発した基本船型を各社に提供し、専業各社が詳細な設計に落とし込んで建造する例はあった。特異な発想ではない」と説明する。

海外シフトの川崎重工

 生き残り策、その3。海外シフトだ。川崎重工業は坂出(香川県)での建造規模を縮小する一方、中国企業との合弁会社がある中国での建造を強化する。川崎重工で造船を統括する餅田義典常務執行役員は「坂出の中核的な技術力は維持・向上していく」としつつ、「中国での建造コストは日本よりも1割は安く、競争力がある」と強調。今後の収益は中国の造船所を通じて伸ばす考えだ。
 三菱重工が海外勢に対抗しようと国内の専業系造船とやろうとしている機能分担を、中国の造船所とやろうとしているとも読める。

低コストな中国生産を加速する川崎重工の餅田常務執行役員(撮影:陶山勉)

 かつては基幹産業の1つとして日本経済をけん引した造船業。その中核だった重工系も生き残りに向けて歩む方向性は別々だ。どの道が成功するのか、すべてうまくいく可能性もあるが、その逆もありうる。
 造船はオールドエコノミーとして斜陽産業のイメージで語られることも少なくない。ただ世界シェアは往年の5割には及ばないが、依然2割ある。地方を中心に千人単位が働く造船所の雇用効果も大きい。今後も一定の産業として役割を発揮させるためにも、構造変化に対応するスピードを上げ、柔軟に試行錯誤を重ねていくしかない。