「混乱型」の代表は自動車向けの半導体を手がけるルネサスだろう。官民ファンドの産業革新機構から出資を受け経営危機から立ち直ってはみたものの、直近約1年で3回トップが交代している。

 前任の遠藤会長は、主導したドイツ半導体メーカーとの統合計画が革新機構から受け入れられず昨年末に就任半年足らずで辞任。にも関わらず、今年4月に就任した呉文精社長兼CEOは、3000億円規模で米半導体メーカーを買収計画中という。自動車大手や革新機構の影響力に揺さぶられ、経営はぶれている。理想の経営者像もぶれやすく、すぐに解任につながる。

 一方、「ポスト創業家・長期政権型」にも苦労の跡がにじむ。LIXIL・藤森氏の解任を巡っては、創業家出身の潮田洋一郎取締役会議長の意向が反映されたと言われる。後任には従来のM&A(合併・買収)路線から一線を画す瀬戸欣哉氏を据えた。ベネッセ・原田氏も創業家の福武一族からの信認を得られなかった。

 LIXILは傘下企業で発覚した不正会計、ベネッセは顧客情報漏洩事件という不祥事もあったが、創業家が長期政権で企業を成長させ、その後を託した経営者が全幅の信頼を勝ち得なかったという構図は残る。

電撃解任後の株価は低迷する
●トップ交代判明後の株価の推移
(注)8月25日終値時点

カリスマ後の重圧

 そもそも「前任経営トップの長期政権に支えられた後は、周囲の取締役などの経験値が少ない場合が多く、業績が低迷する傾向がある」(野村総合研究所の松田真一上席コンサルタント)。長期政権後というハンデに加え、創業者一家の監視という経営の制約が加われば、経営手腕を十分発揮するのは至難の業だ。

 スポーツで振り返ってみると、名古屋グランパス・小倉監督の前々任者にはストイコビッチというレジェンドがいた。監督としては2008年~2013年に長期政権を築いている。ドラゴンズ・谷繁監督の前には落合博満氏がいた。しかも落合氏は現在ゼネラル・マネージャー(GM)として、創業家同様に厳しい視線を注ぐ。やりづらいはずだ。

 世界を眺めてみても、イングランド・プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドFCは27年間続いたファーガソン監督時代からの残影に苦しんでいる。かつて栄光を見た組織ほど、前任が引き上げたハードルが高く、後任への失望も大きい。一時的な停滞でも電撃解任につながりやすい。