在宅のサービスには、メッセージ社が東京都新宿区と杉並区、世田谷区で展開している、「在宅老人ホーム」がある。利用者は自宅に住みながら、訪問してくるスタッフのサービスを受ける仕組み。月額の料金は、要介護5でも食事代を含めて10万円以内を目安とした画期的なサービスだ。

 ただし、事業所から利用者宅までの距離や利用者数など、一定の条件が揃わなければ収益が上げるのが難しい仕組みとなっている。サービスの提供範囲を広げていくためにも、医療機関との連携を強化したり、利用者とスタッフとの通信手段などに工夫を凝らしたりしていく方針だ。

SOMPOケアの奥村幹夫社長。同社は、損保ジャパン日本興亜ホールディングスの介護事業の経営管理を担う(写真:秋元忍)

 さらに、同社はIT(情報技術)や介護ロボットの活用に挑もうとしている。冒頭で紹介した研修所ではこうした技術を開発する際の実験場所としても、活用していく予定だ。

 介護は労働集約型産業であり、あらゆるサービスには人の手がかかる。この究極の問題を解決するため、例えば高齢者を見守るセンサーなど、技術開発は進んでいる。しかし、業界を劇的に変えるような画期的で汎用的なものは、生まれていないのが現状だ。

 技術の進歩で生産性を上げられれば、その分スタッフの負担は減り、人件費を増やして処遇改善につながる可能性がある。「今後、労働人口が減る一方で、介護サービスを受ける人は増えていく。広がっていく需給ギャップを埋めるため、取り組んでいきたい」と奥村社長は強調する。メーカーと共同で技術を開発することで、自社とメーカー双方が有益となることを目指している。

 こうした話を聞きながら、記者は気になったことがある。ネクスト社の前身であるワタミの介護は、利用者とのコミュニケーションを重視して、利用者にできるだけおむつを使わせないようにトイレに行くのをフォローするなど、人の手によるケアを重視してきたからだ。そのため、新しい会社の考え方にとまどいを感じているスタッフも中にはいるかもしれない。

 技術の開発が効率的な働き方につながり、スタッフの負担軽減につながればなによりだが、過度なロボット化が進むことによって、現場が無機質な雰囲気になってしまったら、利用者や家族にとっても物足りなさが出てくるのではないだろうか。

 たしかにコミュニケーションに関しては通信技術が進んでおり、必ずしも全て対面での会話を前提にしなくてもよいケースもあるかもしれない。介護業界の慣習となっている部分を、新たな視点で見直していく必要性はある。

 人の手によるケアと、最新技術。両者がちょうどよい按配で取り入れられた、従来にない介護サービスの開発が、進んでいくことを期待したい。