韓国メディアによると、国家新聞出版広電総局から各テレビ局に通知された禁止事項は下記の通り。
・BIGBANGやEXO(韓国の人気アイドルグループ)といった団体の中国での出演
・中国国内における韓国の文化産業への新たな投資
・1万人以上の観客の前で韓国のアイドルを出演させること
・韓国のテレビドラマ、バラエティー番組との協力など、新たな契約

中国は「韓流」の最大消費国

 韓国芸能界にとってこの動きは大きな痛手だ。

 2014年の韓流コンテンツの全世界市場規模は12兆5598億ウォン(約1兆2000万円)。その最大の消費市場が中国で、今や日本以上に韓流の人気は高い。テレビ番組には韓国のアイドルや俳優が当たり前のように出演し、民放でも韓国のドラマが韓中同時放送され高い人気を得ている。一昨年中国で大ヒットした韓国ドラマ「星から来たあなた」に主演したキム・スヒョンは、中華圏だけで約30社のCMに起用され、34億円を稼いだと言われる。今年上半期に韓中同時放映された「太陽の末裔」に主演したソン・ジュンギも、既に中国で10社以上の会社からCMオファーを受けている。

 K-POPと呼ばれる音楽も若年層を中心に中国で支持されている。昨年韓国のネット会社が発表した、中国で人気の歌手トップ10(中国のSNSのビッグデータから分析)に、EXO(1位)、BIG BANG(2位)、Super Junior(4位)、防弾少年団(6位)、INFINITE(9位)の5組の韓国のアイドルグループがランクインしていた。

 今回の動きによって、既に韓国の4大芸能会社の市場価値は3615億ウォン(約360億円)吹き飛んだとされているが、韓国芸能界側としては手の打ちようがない。謝罪するものでもなければ、中国側に媚びを売って改善するものでもない。禁韓令が解かれるのをおとなしく待つ以外に対応策はないのだ。自国の市場が小さいため、海外市場に打って出て稼ごうとするのは企業として当然の動き。アジアを中心に韓流文化の浸透を進める方針を変える必要はないが、当面は最大の消費国である中国での活動を慎重に進め、中国マネーに頼らない体制作りを急ぐ必要がある。

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