こうした消費者の行動を先回りして、アサヒは昨年9月に営業セクション内にEC サイトの担当グループを設置。ネット通販への営業体制を強化し、スーパーや量販店と同様に販促提案に力を入れる。ECサイトでよく売れるカテゴリーは糖質オフやプリン体オフという商品特徴を持つ商品で、リピート購入も多いという。ECサイトでの顧客獲得が、「クリアアサヒ 贅沢ゼロ」のような第三のビールでのシェア拡大に繋がったとも考えられる。

 一方のキリンはどうだろうか。キリンビールのマーケティング部の山形光晴部長は「本絞りなどはECサイトでのPRなど進んでいたが、新ジャンルは遅れてしまった」と出遅れを認める。

 実際、記者が8月1日に確認したところ、アスクルが運営する通販サイト「LOHACO(ロハコ)」の「ビール特集」というページ内にある「おすすめブランド特集」にアサヒやサントリー、サッポロビールが並ぶのに対し、キリンは名前がなかった。新ジャンルを含めて、ECサイトにおけるキリンの存在感は小さかった。

 もちろんキリンは下期に新ジャンルでの巻き返しを狙う。4月に発売した「のどごしスペシャルタイム」により力を入れるほか、9月には糖質とプリン体がゼロの「のどごし ZERO」を発売する。出遅れていたEC サイトも「ECサイトは大事なチャネルなので、今後やっていきたい」(山形部長)と意気込む。しかし、選ぶ行為に疲れた消費者がどれだけブランドをスイッチするかは未知数だ。

 多くの企業が利益率を重視する経営に移り、かつてのようなシェア獲得競争は少なくなったものの、固定費が重い装置産業にとって、生産量の増加によるシェアの獲得はやはり重要だろう。消費者の購買行動や生活スタイルが急速に変化する中、シェアの獲得にはおいしさの訴求だけでなく、消費者の購買行動や販売チャネルの特性にあわせたPR手法が求められている。