駒崎さんは、仏ロレアルグループとユネスコが科学の発展に寄与した女性科学者を表彰する「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」において、2018年度の日本特別賞を受賞した。日本で初めて病児保育園を開設するなど、科学者を含め様々な環境にいる女性たちの活躍に貢献した点が評価された。

 駒崎さんはフェイスブックで、「女性科学者として優秀であるほど、保育園に入れないのはなぜか」と題し、文部科学省の外郭団体である日本学術振興会から研究費を得ている優秀な女性研究者が、学術振興会とは雇用関係が無いために子どもを保育園に入れにくい実態について指摘。そのうえで、日本の研究者全体に占める女性の割合が15.3%と、世界(28%)に比べて低いことを問題視していた。

 確かに研究者の雇用形態上、(女性)研究者が子どもを保育園に入れにくい実態はあるのだろう。しかし、研究者全体に占める女性の割合が低いのは、必ずしも女性研究者の子どもが保育園に入りにくく子育てが妨げになっているから、というわけではないはずだ。

 身内に女性研究者を持つ私は、研究者の世界における競争がいかに熾烈であるかを日々感じている。だからこそ、子どもが保育園に入れないために、女性研究者が研究を断念せざるを得ない実態には憤りを感じる。

データ比較でより説得力のある問題提起に

 ただ、端的にいえば、女性研究者のシェアの低さをもって「女性研究者の処遇に問題がある」と論じるのは、男性研究者にフェアではないと思うのだ。

 この場合、例えば「1人当たりの論文発表数」を男女比較したり、同一の女性研究者における出産・育休前後のそれを比較したりすることで、より説得力のある問題提起となるのだろう。「経営幹部や管理職に占める女性の割合」など、女性活躍でよく引用されるデータに関しては同じことがいえそうだ。

 誤解のないように申し添えると、経産省の担当者や駒崎さんを否定する意図は全くない。ただ、メディアを生業とする一人として、今回、改めて「数字の持つ力」を過小評価してはならないと感じた次第だ。

 自分にとって都合の良い論調を強く打ち出すために、偏った数字の使い方をしていないか。それにより、日の当たらない側の数字に含まれる人々がどう思うか――。ソーシャルメディアを通じて誰もが発信者になれる現代では、数字の力を借りる場合には、誰もがちょっと立ち止まって考える必要があると思っている。

日経ビジネスRaiseのオープン編集会議では「起業のリアル」をテーマにした企画をスタートしました。起業って怖くないですか? 起業って難しくないですか? 起業の資金や仲間はどうやって集めるの? 投資家を納得させるビジネスプランのツボはどこ?そんな起業にまつわる疑問をみんなで議論しています。

Powered by リゾーム


この記事は…

参考になった

参考にならなかった

過去のコメント
  • 保育園の問題ではなく、女性のほうが、リアリストが多いということ。一か八かで人生を棒に振るかもしれない博士課程に女性は賭けない。女性優遇の求人が増えても、女性はこんな期待値の低い賭けはしない。

  • 競争が激しいところでは、周辺に溢れる情報から都合の良い物を拾い上げてその人なりの理屈をうまく構築できる事が、評価を高めるうえで有利に働くのは間違いのないことです。科学研究なら我田引水の理屈でも長い間には他の情報で訂正作用が働きますが、政策や人事はそのようなメカニズムが原理的に存在せず、別の我田引水での修正を待つしかありません。
    ですから、競争が全面肯定される世の中、この件に限らず情報を受け取り使う側は裏取りと批判的考察をしっかりして、判断を間違えないよう自衛するしかないのでしょうね。

  • 「エイジングを日本のアドバンテージととらえ」るには、高齢化率より平均寿命をベースに考えるべき、というのには賛成ですが、研究者に占める女性の割合が国際比較で著しく低いことは動かしがたい事実。保育園入所が難しいことが少なくともその理由の一つであることは確かなのでは?
    論文提出数の男女差を問うても、結局、現状、女性研究者の研究環境が厳しいことを示す数字が出るだけかと。医大の入学時に、男性優遇措置が行われていたように、日本は様々な形で男性に優しい社会です。
    まず、日本が女性の力を生かしていない国であるという数字〔研究者の男女比、議員の男女比など〕をしっかり把握した上で、女性の力を生かすことを邪魔している要因を探ることが大切なのではありませんか?

  • 当事者です。
    出産1回、流産1回、現在妊娠中です。
    地域差があると思いますが、保育園は入れられているので問題ないです。
    病児保育は足りません。研究者は融通が利くこともありますが、どうしても休めないことも多いです。
    発熱で呼び出されて、慌てて翌日の病児保育を予約しようとしたら予約が埋まっていることがほとんどです。
    地方はベビーシッターも少なく、途方に暮れます。
    どちらかの親のサポートがないと続けられません。
    妊娠・出産は研究生活を中断せざるを得なくなります。
    妊娠すると途端に学会発表やジャーナルへの投稿に躊躇いが生じます。
    発表やリバイスを責任持って対応できないからです。
    アクセプトされていた学会をキャンセルしたり。
    その後流産した時は、ただ怠けているように見えて目も当てられません。
    ポストをとってすぐは、当面妊娠するなと言われたりもしました。
    続けられるか何回も悩みましたが、好きなので続けています。

  • 「長寿」は高齢化率を上昇させる一因ではある、とはいっても平均寿命がこの数年更に伸びているとも聞かない。主因は記事にも書かれている「少子化」だ。69歳の私は4人兄弟、私の子供は3人だが、孫は2人しかいない。今後増える予定はないのでこれで終わりと思われる。私の家族は日本の縮図の様だ。世代を経るに従って、急速に人口が減ってしまう。子供たちはまだ結婚しているだけマシとも言える。日本全体では『生涯独身』の若い世代が増えているという。何故こうなってしまったのか?財政を見ても、少子化で人口が大幅に減る次の世代への「負の遺産」は膨れる一方で財政再建を今の世代が実現する気はなさそうだ。年金や健康保険も、年寄りは優遇するが、その制度は次世代には継続は不可能。こんな「お先真っ暗」の国で苦労して子育てをしようというのが少数派になってしまったのは当然の成り行きと言える。女性問題も同じで、首相は口では『女性活躍』とひびきの良い言葉を発するが、制度としては何も実現せず、企業に強力を呼びかけただけだ。あの米国ですら、「女性活躍」実現のためには罰則付きの数値目標を定めたので今日がある。「Lady first」というのは欧州からの移住者が女性(妻)を荒野の米国に伴うのに大事にしないと一緒に行ってくれなかったために「仕方なしに」定着した習慣であり、嘗ては家事に専念する女性が多かった。『口先』だけは響きの良いことを口にしても、罰則付きの制度化を実行しないのは『やる気がない』のと同じ。こういう状況を見ている若者が『国の未来ため』に困難な道を選ぶと期待するほうが無茶だと言える。それでも、議会制度にあって一番重いのが『票』でそれを年寄りが握っている。年寄りにも子や孫はいるはずなのだが、自分が死んだ後の事よりも自分が楽をしたと思う人が多いから現在の政治が行われている。


あなたにおすすめ