クルマがドライバーの気持ちを読み取り、思いやる――。ルネサスエレクトロニクスは声や表情からドライバーの感情をくみ取って反応する「感情を持つクルマ」の開発ができる半導体キットを年内に発売すると発表した。ドライバーや同乗者の「気持ち」や「性格」に応じて運転の仕方を調整する自動運転車の開発に役立つという。なぜクルマに感情を持たせようとするのだろうか。

 「自動運転時代では、『クルマが感情を持つ』ことが重要な要素になる」。ルネサスの吉田正康車載情報ソリューション事業部シニアエキスパートは、感情を持つクルマ用のキットを開発した背景をこう語る。

 ルネサスはソフトバンクグループ傘下のcocoroSB(東京・港)が開発した「感情エンジン」を活用。感情エンジンは、カメラで読み取ったドライバーのまばたきの数や笑顔、声の抑揚、座席に組み込んだセンサーで吸い上げた心拍数などから、感情を推測する技術だ。ルネサスはこの感情エンジンに対応した半導体を使ったシミュレーターを公開した。

 
ソフトバンクが7月20、21日に都内で開いた法人顧客向けイベントで披露

 シミュレーターの運転席前面にはカメラが2つ。マイクやセンサーもついており、「つながるクルマ」と話すと、最初の感情を読み取る。記者が乗って声を発すると、記者の感情は「快適 Happy」、フロントガラスに表示されたクルマの感情バロメーターは「悦」と出た。「ドライバーが乗って、喜んでいます」と担当者。

ネコが飛び出してくるとクルマは「悲しむ」

 2020年の通勤風景を想定したというシミュレーターは、まず一般道を走る。突然横から猫が飛び出し、ハンドルを切ってよけると、車の感情は「悲哀」から「怒」と表示された。「もう、何やってるんだ、という感じですね」(担当者)。

 高速道路を通ってオフィスに到着。その間、メールを読み上げたり、この日のランチ場所を音声認識で予約したりと、完全自動運転が実現したときの車内での過ごし方をデモした。

 「感情エンジンが、車内での会話などから乗っている人の性格や感情を読み取って運転の仕方を変えます」と吉田氏は説明する。例えば家族で乗っていると判断すれば安全運転、ドライバーが焦っているなと感じれば最短距離を選択するなど。「完全自動運転時代でドライバーがいなくなると、乗っている人が安心できることが大事」と吉田氏は語る。

フロントガラスの右下にクルマの感情を示すバロメーターがある