クルマに感情を持たせる理由

 こうした未来について「面白い、すごい」と思ったものの、実はここまで聞いていても、なぜクルマが感情を持つ必要があるのか、理解できていなかった。だが、吉田氏の次の一言で腹落ちした。「人間も、相手が何を考えているかわからないと不安になりますよね」。

 確かに無表情の相手と話していると、目の前にいても不安になる。完全自動運転で運転を車に任せるとなると、そのクルマのことを信用しなければ安心できない。相手を信用するには、自分の感情を読み取ってくれるだけでなく、相手の感情がなんとなくでもわかった方がいい。ようやく感情を持つクルマの利点に納得した。

 もちろん、感情を読み取り、それに対応するクルマの開発は、ドライバーの安心だけが目的ではない。搭乗者の属性や性格、感情を理解することで、インターネットを通じて車の中でレジャーやレストランの提案をするなど、様々なサービスの提供につなげられる。ルネサスは開発キットを、完成車メーカーだけでなく、ソフトウエア開発会社にも広く提供する方針だ。

 技術が日々進歩しているのは理解していても、何となくまだ「自動運転は怖い」と感じていた。業界ではそんな人間の不安の解消を含めた開発まで進んでいることを実感したデモだった。