乗って分かったミラーレス車の「もう一つのすごさ」

 運転して初めて分かったのは、「クルマが見ているもの」をドライバーも同時に見ていることの重要性だった。

 後続車両との距離感が分かるのは運転するうえでも役立つが、赤や緑でクルマが見ているものが表示されることで、「このクルマは全ての車両を認識してくれているんだな」という安心感につながる。これが、記者が試乗して最も感心したポイントだった。

 「ヒトと機械の協調」――。これからの自動車にとって、重要性が増すキーワードだ。なぜなら、完全自動運転が実現するまでのプロセスでは、機械が運転する場合とヒトが運転する場合が併存し、その切り替えが必ず必要になるからだ。

 その上で、ドライバーに必要なのは、「今、この機械=クルマは何をどこまで認識しているのか」という情報だ。機械が何を見ているのかをヒトが知ることで初めて、安心して機械に任せることができるし、いざとなった時に運転を代わることもできる。

 モニターで後方を見るミラーレス車は、機械とともに運転する「慣れ」をドライバーに与えてくれるのではないか。

 実際、コンチネンタルなどの大手部品メーカーや多くの自動車メーカーは、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転を実現するにあたって、HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)を重視している。HMIとは、ヒトとクルマが接する部分の全てを指す言葉で、現在、メーカーにとって重要な開発分野となっている。

 コンチネンタルは、ミラーレスを単なるカメラへの置き換えとは捉えていない。「視認性を改善するだけでなく、状況に応じた指示をモニターに表示する可能性を開くものだ」。同社インテリア部門で研究開発を担当するオトマー・シュライナー氏はこう言う。

 カメラによるミラーレス化は、運転支援機能と相性が良い。同社はミラーレスと、車線変更時のアシスト機能や進入車両のアラート機能などを融合する方針だ。現在、世界中の自動車メーカーから問い合わせがある。

 「自動運転」という言葉が先行しているが、機械が完全に運転に責任を取れるようになる時代はまだまだ先だ。ヒトと機械が情報を共有し、安全性を担保しなければならない期間は長い。どうすれば機械のことを知ることができるか。あるいはどうやってヒトのことを機械に知ってもらうか。いずれも今後のクルマにとって極めて重要な機能になるはずだ。