問題は報酬体系に透明性が確保されているか

 もっとも、日本の役員報酬は「グローバル基準」に比べるとまだ低いとの指摘はある。コンサルティング会社のウイリス・タワーズワトソンによると、2015年度の売上高1兆円以上の日本企業の最高経営責任者(CEO)報酬は中央値で1億2700万円。米国の1割に満たない水準で、英国やドイツ、フランスの企業と比べても低い。

 有能な経営者に対して、高い報酬を与えることは市場原理に照らせば合理的だ。過度に報酬を抑制すれば優秀な経営人材が日本企業を忌避することに繋がり、結局日本企業の競争力が落ちることになりかねない。同じ企業内で外国人の方が日本人より高い報酬を得るという「格差」が存在しているのは、外国人の人材を引き止めるためだ。ランキングを見ればソフトバンクグループ、武田薬品工業、日立製作所、すかいらーくなどでそうした現象が発生していることが分かる。

 問題は報酬体系に透明性が確保されているかだ。株主にとって最もわかりやすいのは、株式で役員報酬を支払う形だろう。業績不振だったり、将来成長に不安があったりすれば株価が下がるので、役員報酬も下がる。逆に、企業価値を高めれば報酬が増すので、役員の健全な経営努力を促すインセンティブとなるわけだ。ウイリス・タワーズワトソンによれば、米国では株式など「長期インセンティブ」と呼ばれる報酬が69%、英国では44%、ドイツでは33%なのに対して、日本はわずか14%にとどまる。

子会社から報酬を支払う「抜け穴」も

 日本企業も大きくは株式報酬を高める方向にある。2015年6月に導入されたコーポレート・ガバナンス・コードには「中長期的な業績と連動する報酬の割合や、現金報酬と自社株報酬との割合を適切に設定すべき」との文言が盛り込まれた。2016年3月末には、企業が株式報酬を導入するハードルを下げる税制改正法案が成立している。

 役員報酬が膨らむ可能性を増やすからには、規律が重要だ。客観的に説明がつく報酬体系を会社側が提示し、株主が承認するのが本来の姿だ。事実、会社法では役員報酬の総額を株主総会で決議し、その範囲内で会社が支払うこととしている。報酬委員会を設置し、客観性を高める企業も増えてきた。

 だが会社法の規制には抜け穴があり、事実上機能していない。上場企業単体でしか適用されないためだ。そのため、傘下の連結子会社から報酬を支払わせることで総会で認められた額以上の役員報酬を支払うことが可能で、実際にその手法を使っている企業が散見される。役員報酬に対する株主によるガバナンスをないがしろにする行為で問題がある。

 欧米で役員報酬の批判が高まった大きなキッカケが、リーマン・ショックに端を発する金融危機だった。業績のみならず経済に大きなダメージを与えながら、巨額報酬を手にして逃げ切った経営者に世論の怒りが爆発した。日本はこれから適切な役員報酬のあり方を探る段階にあるが、先達の教訓を生かさない手はない。