PDCAとは事業に対してPlan(計画)、 Do(実行)、 Check(評価)、 Act(改善)の 4段階を繰り返し、管理、継続、または見直しをかけるシステムのことだ。ビジネス界では常識とも言える基本的な管理手法だ。しかし、松田氏は「実行された政策に対して、後から誰もチェックしない。当然、チェックの後に来る改善もない。チェックを受け、責任を取ることがないから、計画も実行方法もいい加減になる。言いっぱなしの状態でPDCAができていない」と指摘する。
松田氏はPDCAを「入口、中口、出口でのチェック」と言い換え、国会でも発言をしてきたが、議員の意識を変えるのは難しかったと振り返る。
2つ目の契約順守に対する考え。松田氏は「(政界の)約束手形は最初から不渡り手形だ」と表現する。
「『日本を元気にする会』の党首として他党との交渉事が多かったが、一度交わした合意事項の書類を目の前で破られたことがある。これはショックだった」と振り返る。
もちろん、政界において、政局の流れから前言を覆すことも少なくはないだろう。それはビジネスの世界においても同様だ。しかし、合意事項を一方的に破棄する行為が散見されたとすれば、常識的に考えても耐えがたいことだ。まして元経営者ならなおさらだ。
「ビジネスの世界に生きてきたバックグランドを有権者にご支持いただいて私は政界入りした。その常識を持ったまま政治家を続けるのは難しかった」(松田氏)
ベンチャー政党を立ち上げたものの
松田氏が参院議員となった6年前。第三極として期待された野党勢力のみんなの党だったが、その後、分裂。渡辺喜美・元代表の借入金問題なども相まって、組織力は弱まり2014年11月、解党を決定する。
翌2015年1月、松田氏はアントニオ猪木参院議員らと計5人の議員で新党「日本を元気にする会」を設立。代表となり独自路線を目指す方針を決めた。
「これまでの政界にない全く新しい政党にしたい。そんな、ベンチャー政党を目指した。その特徴の1つが直接民主型政治。国会に提出された重要法案に対して、ネットなどで党員に議論してもらい最終的には賛否を投票してもらう。その結果を議員の投票行動に反映させる仕組みを導入した」(松田氏)
1000人を超す党員が安保関連法案など重要な法案に対して、ネットを通じて意見を表明した。それを反映した「元気にする会」の行動は一定の効果を上げたものの、最後は、所属議員の離党によって国会議員5人以上という政党要件を失った。
松田氏はこの責任を取って今年6月に代表を辞任。7月の参院選には出馬せず、政界を去ることを決めた。「是々非々の政党を目指したが、自分の力不足だった」と松田氏は語る。
みんなの党の分裂と解党、ベンチャー政党の立ち上げと挫折。この経験を通して松田氏が感じたことは選挙で当選さえすればいいという自己保身の考え方を持つ国会議員の多さだったという。理念もなく、有利と見れば所属する党派を変える。かつて対立し、批判した党派にも臆面もなく参加する。そうした状況を数多く目の当たりにしてきた。
日和見で選挙に有利な行動を露骨に見せる国会議員たち。その状況は何も今に始まったことではないが、最近の国政選挙を取材していると、より自己保身に満ちた議員の発言、行動が目立っているという実感が記者にもある。
空虚な選挙演説に有権者もすっかりしらけている。経済界のやり方がすべて正しいとは言えないが、経済界で培ってきた感性をより政治に反映させることが今こそ求められていると言えるだろう。
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