(左から)ヤフーの小澤、宮澤両常務執行役員とデリーの堀江社長
(左から)ヤフーの小澤、宮澤両常務執行役員とデリーの堀江社長

  インターネットを介してモノを買うのが当たり前の時代。経済産業省の推計では2017年度のBtoC(企業対個人)のEC(電子商取引)市場規模は16兆円を超え、年々拡大を続けている。

 注目されるのは生鮮食品などの食品分野。経産省の推計によると、飲料や酒類を含めた食品の市場規模は2017年で60兆円を超える。EC化率は2.41%にとどまるが、巨大市場の開拓を目指す動きが強まっている。

 7月11日、ヤフーはレシピ動画サービス「クラシル」を運営するデリー(東京・品川)を連結子会社化すると発表した。約93億円を投じてデリーへの出資比率を15.9%から45.6%に高め、取締役2人を派遣する。

 「レシピはずっと手に入れたい領域の一つだった」。発表直後、ヤフーの宮澤弦常務執行役員は日経ビジネスの取材に笑顔で答えた。クラシルは約1万8000本のレシピ動画を抱える国内最大級のレシピ動画サービス。宮澤氏によると、食や料理領域の検索ニーズは近年高まっており、強みである「Yahoo!検索」などの魅力を高めたい考えだ。

 デリーの堀江裕介社長は「事業をより深掘りして収益を狙っていこうと考えたときにヤフーの力が必要だと思った」。ヤフー利用者のクラシル活用を進めるだけではなく、ヤフーの資本力や人材を生かして事業をより進化させる考えを明かした。株式公開も引き続き目指す。

 「堀江さんの事業が大好きで、もっと一緒にしっかりやっていこうとしつこく言ってきた。それがここ3カ月くらいのデリケートな交渉を経てまとまった」(ヤフー・小澤隆生常務執行役員)というように、ヤフーの熱烈なラブコールによって実現した今回の連携。だが両社の狙いはさらにその先にある。食材のECへの進出だ。

次ページ 食品のEC化率はやはり圧倒的に低い