働き方改革は、ダイバーシティ(働くヒトの多様性)やQOL(生活の質)の向上といった面から語られることが多い。改革の目標もしばしば「女性幹部比率●%」とか「残業時間●%削減」などと設定されている。ダイバーシティもQOLも重要だが、記者には目的と結果が整理されていないように思えるのだ。

 働き方改革の本質は、労働人口減少への対策だと記者は考える。つまり、労働生産性を向上させることを第一義に考えなくてはならない。女性幹部比率や残業時間の削減はその結果生まれる副次効果ではないだろうか。

 ダイバーシティやQOL向上そのものを目的とすることを否定するわけではない。成功すれば、いずれは優秀な(=労働生産性の高い)人材を会社に呼び寄せることにつながるだろう。しかしこれは、一時的に会社の収益を落とす可能性があることを覚悟しなくてはならない。経営トップだけではなく、中間管理職までその意識が浸透していなければ意味がない。

 例えばある医療関連の上場企業は、夜8時にオフィスを消灯する制度を導入したところ、一部の社員はまるで炭鉱作業員のようなライト付きヘルメットを持ち込んで残業をし始めたそうだ。それ以外の社員もきっとパソコンを持ち帰って自宅で作業をしていることだろう。上司から指示される仕事の中身と量が変わらないのに、労働時間だけ削れるわけがない。

 「労働時間を削減することで、集中力が高まり労働生産性が上がる」という主客転倒の論理展開を耳にすることも多い。この理論は労働生産性が目に見える形で管理されていなければ説得力をもたないはずだが、生産性を推算するモデルを構築している企業は非常に少ない。

 企業が働き方改革においてまずすべきは徹底的に非効率作業を排除し、労働生産性を向上することではないだろうか。その結果、会社の業績もダイバーシティもQOLも向上するのだ。そういった意味で、総務省の取り組みは、先進的であるかどうかはさておいて的を射ている。

 働き方改革に手応えを感じない企業は、例えば上申書や費用精算などの場面で現場の若手が「伝統芸能」と皮肉るような作業が残っていないか、洗い出しをすべきだ。若手社員は「残業時間をどうこう言う前に、やるべきことがあるはずだ」とかえってモチベーションを低下させているかもしれない。