名倉拓郎店長(右端)は35歳。埼玉と千葉にある計5店舗を1人で管理している。店長はレジ打ちはせず、書類作成や売り場状況の確認に集中する

 何よりも印象的だったのは、西松屋の「働き方改革」が、徹底して現場を起点にしているという事だ。

 「不良品が返品された際に作る書類が2種類あって手間がかかる」「売り上げの少ない店で、レジを2台置いておく必要はないんじゃないか」――。

 現場にいる店長やパート・アルバイト従業員だからこそ気付く問題点を、業務システム改革部という専門部署が吸い上げる仕組みが整っている。同部には約10人の社員が所属しているが、彼らの仕事は問題の吸い上げと、その改善策を考えることの2つだけだ。

 例えば、不良品が返品された際の処理。必要な書類が2種類に分かれていたが、昨年これを1種類に減らした。たかが書類1種類を減らすだけの些末なことのように思えるが、900店以上ある西松屋全体で考えると、不良品処理にかかる作業時間を年7883時間削減できる計算になるという。

 「この作業はいちいち面倒くさいな」と誰もが思いつつ、「でも些末なことだ」と社内で放置されている問題に思い当たる節はないだろうか。西松屋はそれを見逃さないのだ。

店長は従業員がどんな業務をするのか決めて表にするが、この作業に毎日1~2時間程度かかる。これをいかに減らすかが、西松屋の大きな課題だ

 西松屋社内では、現場で起きている不都合や非効率について、その責任が誰にあるのかを問い詰めるような雰囲気がない。店舗ごとの売り上げすらも、店長の評価にそこまで反映されたりはしない。

 責任を個人に押し付けず、組織全体として問題を受け止めるから、現場が臆することなく改革に寄与する意見やアイデアを出してきて、それが「働き方改革」を加速する、という好循環になっているように見えた。

 西松屋は四半世紀近く前から、ひたすら現場起点の「働き方改革」に取り組み、今現在も業務のそこかしこに潜む小さな非効率を絶え間なく改善し続けている。

 日本全体の課題となった「働き方改革」の成否を握るのは、大掛かりなシステム投資やトップダウン型の制度見直しではなく、現場で働いている人間の声に真摯に耳を傾け、小さな改革を弛まず続けていくことではないか――。記者の眼には、西松屋がそう静かに主張しているように映った。