
だが近年、米国からの装備品導入で主流となっているのはFMS(対外有償軍事援助)だ。FMSは通常の輸入とは異なり、商社は関与せず、価格や納期を米国政府が一方的に指摘するなど、米国に有利な取引内容となっているとされる。
記憶に新しい戦闘機「F-35」や輸送機オスプレイなどもFMS。F-35は日米交渉の結果、最終組み立て工程こそ三菱重工が担っているものの、ライセンスによる国産生産とは程遠い状況だ。かつて年に数百億円だったFMSはこのところ、4000億円前後で推移するなど、存在感を高めている。
日本周辺を取り巻く目の前の危機に対応するには、国産品開発へ悠長に構えていられない面はある。さりとてライセンス生産などが認められる余地も狭まっている。何らかの形での部分的な参画はありうるが、国内の防衛産業は、自分たちの出る幕がなくなることを心配している。それは国内の雄、三菱重工といえども多かれ少なかれ同じことだ。
国内の防衛産業はこれまで、戦車や艦艇、航空機、通信機器など分野ごとにすみ分け、比較的安定した環境で良くも悪くも共存してきた。
国内防衛産業の再編の導火線にも
だが米国製装備の拡大に身構えることは、競争力のない国内の防衛産業のエゴといって切り捨てられるほど単純でもない。国内の防衛装備品の研究開発や生産能力が弱体化すれば、最終的に国産品という選択肢の喪失につながり、防衛装備品を導入する際の対外的な交渉力を失ってしまう。極端な話、言い値で買わされる羽目になってしまう。しかも雇用など国内産業への波及効果も消滅する。
効率的なミサイル防衛の構築が叫ばれる一方で、国内産業への目配りも欠かせない。各社の危機感が高まれば、競争力強化を目指し、海外に比べて後れているとされる日本の防衛産業の再編へと発展する可能性もあるかもしれない。
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