北朝鮮の「ICBM」(大陸間弾道ミサイル)問題など安全保障情勢の緊迫化に伴い、ミサイル防衛を強化せよとの意見が政府・自民党で勢いを増している。防衛予算が拡大する可能性もあるが、国内防衛産業はもろ手を挙げて歓迎、というムードでもない。「恩恵」が米国の大手防衛産業に偏る可能性もあるからだ。

 このほど防衛装備庁が発表した2016年度の装備品契約額で、三菱重工業は前年度に比べて2倍強増えて4532億円となった。15年度には対潜水艦戦を担う哨戒機の大型契約に成功した川崎重工業がトップに躍り出て、三菱重工は50年ぶりに首位の座を退いたものの、すぐさま奪還した格好だ。

三菱重工が2年ぶりに首位奪還
2016年度の防衛装備品の契約実績
(注)防衛装備庁まとめ

 三菱重工の契約額が急増したのは、陸上自衛隊向けの機動戦闘車や海上自衛隊向けの哨戒ヘリコプターのほか、重要地域の対空防衛を担う地対空ミサイル「パトリオット」関連が大きい。当初パトリオットの能力向上は17年度を予定していたが、ミサイル防衛の緊急性を受けて、急きょ16年度に前倒ししたからだ。三菱重工は米防衛大手、レイセオンからライセンスを受けて国内でパトリオットの生産を手掛けている。

 前倒しという事情をくめば、16年度の三菱重工の数字は実力よりもやや過大ともいえ、「あまり浮足立った雰囲気はない」(三菱重工関係者)のも頷ける。

「米国製」対空ミサイル装備を恐れる国内勢

 問題はここから。政府は今後のミサイル防衛強化策として、イージス艦に積んでいるレーダーや対空ミサイルを陸上配備した「イージス・アショア」や地上配備型ミサイル迎撃システム「THAAD(サード)」など米軍が誇る装備の導入を検討している。

 米国のトランプ政権は同盟国に防衛予算の拡大を要求しており、日本でも中長期的には防衛予算の増額とミサイル防衛強化が車の両輪となって進む可能性がある。

 一方、複数の防衛産業関係者からは「ミサイル防衛に必要な途方もない予算が先端兵器を持つ米国企業に吸い上げられるのではないか」との指摘が聞こえてくる。国内防衛大手の幹部も「装備体系がミサイル防衛に特化したものへ劇的に変わると、国内の防衛産業基盤を維持できるのか不安だ」と漏らす。

 従来、米国政府や米企業は日本企業によるライセンス生産に比較的寛容だった。日本企業はライセンス生産を通じて装備品を構成する技術を地道に学びつつ、国産装備の開発につなげてきた面がある。