「ここ数年、新聞や雑誌で旅行業界が取り上げられるのは、海外からのインバウンド需要の話ばかり。日本人が海外旅行に行くことについて話題に上ることがめっきり減ってしまいました……」
7月4日、日本旅行業協会(JATA)が主催し、旅行大手のトップと新聞や雑誌の記者が年1回集まり意見交換する「記者懇談会」の場で、JATAの菊間潤吾副会長(海外旅行担当、ワールド航空サービス会長)は、開口一番こう漏らした。
2017年に日本を訪れた外国人は2869万人で、その3年前の14年に比べて倍増した。今年は3000万人を突破するのが確実な情勢で、安倍政権が東京五輪が開催される20年の目標として掲げる4000万人も「かなり現実的になってきた」(旅行業界関係者)。
20代の海外旅行者、20年で4割減
海外からの旅行客が急増する一方で、日本から海外へと旅行に行く人の数は、17年で1789万人。12年の1849万人をピークに減少した。足元はやや回復基調にあるが、インバウンド客の伸びとは比べるべくもない。その大きな要因が、「若者の海外旅行離れ」だ。16年に海外旅行に行った20代の人は282万人。20年間で約4割も減っているのだ。
20年前に大学生だった筆者は、夏休みや春休みはきまってバックパックを背負って、チベット、ネパール、中東諸国などを旅したものだった。行先は違っても、どの大学の知人・友人と会っても、長期の休みの前は、どこの国を旅したいか、そんな話題で盛り上がった。
海外旅行をする若者の数が減った背景には、当然、少子化の影響がある。しかし、20年前と比べて、これだけ世界がボーダーレス化して、海外の情報も簡単に手に入るようになったことを考えると、解せない。
そこで、旅行業界の関係者に海外旅行に行く若者が減った理由を尋ねて回ったところ、共通したのは「若者の経済状況が、今は昔よりずっと厳しい」からという意見だった。
アンケートサイト「infoQ」が最近実施した15~29歳の約2000人を対象にした調査では、「国内または海外旅行をするか」という質問に対して、実に65%が「しない」「あまりしない」と回答している。その理由の中で、群を抜いて1位だったのが、「お金がない」(男性44.7%、女性55.0%)だ。

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