不正は次のような手順で実行されていた。

 検査係が検査を実施する際は、多くの人がいる製造現場や事務所ではなく、別棟にある検査室に行っていた。出た検査結果を用紙に記入し、その後、パソコンに入力する。検査結果を改ざんしていたのは、このパソコン入力のタイミングだ。

 強度の達成率が規定の96%程度であれば、基準をクリアする数字に書き換えて登録していた。この指示をしていたのが、品質保証室長。改ざんについて認識していたのは、品質保証室長と検査係の2人だけだった。

 検査室がもっと多くのスタッフの目に付く場所にあったなら、不正に手をかけづらかった可能性がある。これが1つめの不審点だ。

現場が閉じていると感覚が麻痺する

 2つめは、品質をどう製品に作り込むかの設計をする人物(製造担当部長)が、品質保証室の室長を掛け持ちしていた点にある。つまり、自分で作ったものを自分でチェックしていたため、客観的な視点が入りづらい状況にあった。

 さらに、検査結果を自動でデジタル記録するなどの対策も必要だったかもしれない(もちろん、コストの問題はあるが…)。手で用紙に書き、それをパソコンに入力するというのは二度手間だし、入力ミスや改ざんなどの問題を引き起こす可能性が増す。

 最初に誰が、どんな動機で不正を始めたかは現時点では判明していない。当該製品は不良品の出やすい製品だった。そのため不正をしなくても、全体の6%は廃棄処分になっていた。今回、不正の対象になった製品は全体の0.75%。本来、6.75%出ていた不良品を、不正を働くことによって6%にしたところで、それほどのメリットはなかったはずなのだ。

 「廃棄処分を少なくしろという圧力もなかったと聞いている。ほんの少しの廃棄を無くすために、なぜ不正まで働いたのか。今後は辞めた人も含めてヒアリングを進め、解明していきたい」(藤井・神鋼鋼線工業社長)

 他人が聞けば「そんな簡単なこと、どうして気づけなかったのか」と思うことでも、閉じた現場に長くいると感覚が麻痺し、気づけなくなることは多い。いかに多くの目を光らせ、自浄作用を維持し続けるか。この課題はどんな業界のどんな職場にも突きつけられている。