(写真:つのだよしお/アフロ)
(写真:つのだよしお/アフロ)

 先週、自動車部品メーカーに勤める知人が東京にやってくるというので、夕方に東京・白金のオフィスを少しだけ抜け出し、近隣のカフェでお茶を飲みながら雑談をした。折しも、タカタが欠陥エアバッグの問題で倒産した直後。話はおのずとその方向へ行った。

 その知人がしみじみとこう言った。

 「ウチも同じ部品メーカーだから他人事だとは思えなくて。起きたことは本当にいけないことだけれど、明日は我が身という気持ちにもなる。この問題は自動車業界全体に大きなインパクトを与えるのではないでしょうか」

 「確かにそうかもしれないですね……」

 記者も同意した。というのも、ちょうど本誌にタカタに関するニュース記事を書いたばかりで、その内容と知人が言っていることが合致していたからだ。記事のタイトルは「タカタ破綻で変わるサプライチェーン 部品業界に『三重苦』」。ざっと要約すると、こんな話になる。

部品メーカーが消費者対応する時代へ

 これまでは自動車部品で何らかの問題が生じた場合、矢面に立たされるのは自動車メーカーだった。だが、タカタの欠陥エアバッグ問題で矢面に立たされたのは部品メーカー。今後、同様の問題が起きた時、消費者クレームや消費者からの訴訟に対応するのは部品メーカーになる可能性が高いだろう。

 すると、何が起きるのか。部品メーカーは新たに3つのコストを負わなければならなくなる。(1)消費者からのクレームに対応する窓口を置くコスト、(2)訴訟に備えるために法務部門を強化するコスト、そして(3)品質問題で支払わなければならない代償をより多く負担するコスト、の3つだ。

 (1)と(2)の機能はこれまで自動車メーカーが持っていたため、部品メーカーは持つ必要がなかった。ある意味、業界全体で払わなければならないコストを自動車メーカーに集約することで、効率化が図れていたわけだ。

消費者への対応を自動車メーカーに集約することで、それにかかるコストを抑えられていた
消費者への対応を自動車メーカーに集約することで、それにかかるコストを抑えられていた
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 ところが、タカタ問題後(ポスト「タカタ」時代)は、これらの機能をそれぞれの部品メーカーが個別に持たなければならなくなる。

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