だが当時、新谷部長は、ノーリツ鋼機の製造第1部付でISO(国際標準化機構)の文書作成や生産改善を考える立場にいた。「はっきりいって窓際族だった。本部長から『明日から野菜を作ってもらいたい』という言葉には驚いたが、新しいことをやるなら良いかなと思った」(新谷部長)。
年上部下が働きやすい環境づくり
新谷部長の上司となったのが三原洋一社長(36歳)。三原社長も野菜づくりの経験はない。誰もノウハウがない中でのスタートとなった。「誰も知らなかったから素直に野菜作りに専念できた」(新谷部長)。新谷部長が野菜づくりに専念し、三原社長が親会社への報告や資金調達といったように役割分担した。「新谷部長が働きやすい環境を作るのが私の仕事。事務作業や決裁はほとんど私が担っている」(三原社長)。
三原社長は当時20歳代で事業の立ち上げを急ぐばかりに、強い口調で指示を出すこともあった。ほかの中高年の社員はそっぽを向くなか、新谷部長だけが違った。「釣りに誘ってくれたり、牛丼を一緒に食べに行ったりしてくれた。和歌山に初めて来たところだったので救われた」(三原社長)。
新谷部長は同じように早く立ち上げたいと感じていたので、三原社長の気持ちをくみ、文句を言わず付いていったのだという。温室栽培でデータをたくさん蓄積し、軌道に乗りだした。レタスを自社で生産するほか、栄養価が高いニンジンを栽培するなどしている。提携先を増やすと新谷部長の活躍の場が広がる。この2人の役割分担が、NKアグリの事業を支えている。
このように年上部下であっても、いきいきと働ける環境はある。高齢化社会を迎え、定年延長制度の導入もあり、今後年上部下が増えるだろう。いま働き方改革に取り組む企業は多いが、年上部下が働きやすい環境づくりも改革のテーマに適しているといえそうだ。
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