語尾に「ね」を付けると優しくなる

 岡田氏のように社内人脈を駆使して盛り立てるパターンもあれば、社外で培った管理職のノウハウを年下上司に教える役割を担う人もいる。

 そのひとりがドラッグストアなどを運営する富士薬品の業務システム部の岡隆則課長(52歳)だ。岡課長の上司に当たるのが、金子隼人部長(38歳)。岡課長は「やっぱり自分より年下の上司には違和感はあった。でも、すぐになくなった」と話す。

富士薬品の金子隼人部長(写真奥)は岡隆則課長(手前)より年が若いが上司だ(写真:北山宏一)
富士薬品の金子隼人部長(写真奥)は岡隆則課長(手前)より年が若いが上司だ(写真:北山宏一)

 金子部長は大学卒業後に入社した生え抜き組。一方で岡課長は転職組。かつては岡課長も50人ほどの部下を抱える管理職を務めていたが転職してきた。「人事考課や会議への出席といったことに時間を費やすよりもシステム開発に携わっていたい」(岡課長)。

 そこで役割分担を決めた。金子部長は社内に人脈があるため、調整役を買って出る。そのシナリオ作りには岡課長が相談に乗るという。

 岡課長の方が管理職としての経験が長いため、時に粗さも目に付く。そんな時は2人きりでアドバイスするのだという。岡課長から金子部長に「『ね』を語尾につけるだけで優しくなる」といったことを伝えるという。

 今でこそ良好な関係だが当初はギクシャクしていた。金子部長は年上部下を持った経験がなかったため、岡課長に話しかける時には一旦紙に下書きしてから臨むなど工夫していた。長く話すことで岡課長の人柄が分かるようになり、信頼関係ができたという。

新規事業の年上部下がキーマンに

 富士薬品のケースのように役割分担を明確にすることで部門を担うケースもあれば、新規事業の立ち上げで共に汗をかくパターンもある。

 新規事業の立ち上げの現場で奮闘したのがNKアグリの新谷浚也部長(57歳)だ。NKアグリは和歌山に本社を置く精密機器メーカーのノーリツ鋼機の関連会社。新谷部長はノーリツ鋼機の製造部門一筋で板金や保守など歩んできた。特に保守部門では「クレームを受けた顧客と仲良くなる」ことから伝説の保守マンと呼ばれていた。

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