それぞれの取り組みには一定の相乗効果が見込める。一方で、グループ全体のアライアンス戦略ははっきりしない。一つひとつの協業が全体のなかでどう位置づけられているかも見えない。新事業を急ぐ各部門が、無秩序に協業を進めているような印象すらある。

 同様に、東電の発電所では業務効率化の取り組みが急ピッチで進むが、これも東電グループの収益にいつ、どの程度貢献するのかは明らかではない。研究部門は電気自動車(EV)や蓄電池をうまく活用して設備投資を抑える方法を模索している。ただ、こうした新しい技術を使うことで将来の日本の電力供給や事業構造がどう変わるのか、消費者にどんなメリットがあり、東電がこれでどう稼げるようになるのかもなかなか見えてこない。

 日本の電力需要の増加は見込めない。一方で蓄電池やEVを始め、高効率の風力発電に新しい節電技術など、業界の内外には経営の逆風を乗り越える武器やイノベーションの種がたくさん転がっている。複雑に吹きすさぶ逆風と順風をどうさばいて東電グループを前に進めるのか。そのビジョンを示すことは、国内最大手のトップが果たすべき責務でもあるはずだ。

 小早川社長が尊敬するのは第9代米沢藩主、上杉鷹山という。武士にも農作業を求め、無駄なコストを削減し、新しい産業を興して財政難に苦しむ同藩を救った人物だ。「難しいところに切り込んでいって、(多くの関係者と)協力して(藩政改革を)やりきっている」(小早川社長)。上杉鷹山は「成せばなる、成さねばならぬ何事も」の名言で知られる。東電改革も「成せばなる」のか。少なくとも小早川社長が早急に「成さねばならぬ」課題は山積している。