東電には16兆円という巨額の福島第1原子力発電所事故の処理費用がのしかかる。これに対応するため、東電は国と協議して今年5月に再建計画を発表した。事故後、東電が経営危機に陥るたび経産省主導でこうした計画は度々作られている。その副作用が出ている。東電社内には「今回も国がなんとかしてくれた」という弛緩した空気や、「いつまで再建計画をやらされるのか」という停滞した空気が一部でじわりと広がっているという。

 こうした社内の空気を一変させるためにも、小早川社長は夢のあるビジョンを社内外に示さなければならない。重視する風土改革にしても、社員の士気を高められるリーダーがいて初めて実現するもの。たとえ拙速でも、粗が目立とうとも、小早川社長ならではの成長戦略をできる限り早く示してほしい。

 福島第1原発事故の責任を負う東電に大きな投資の失敗は許されず、同時に収益の多くを事故処理費用に当てなければならないため投資余力も限られる。結果、手をこまぬいていれば必然的に東電は従来と同様、あるいはそれ以上に保守的になっていくだろう。一般の民間企業のトップ以上のリーダーシップや剛腕さを示せなければ停滞は避けられない。

東電の上杉鷹山になれるか

 小早川社長にとってグループ戦略を示すことは急務だ。

 東電はここ数年で数多くの企業と協業関係を結んできた。火力発電部門では中部電力やGEパワー、三菱日立パワーシステムズ、送配電部門では大和ハウス工業グループやパナソニック、小売り部門は製造業のエネルギーマネジメントに強みを持つ仏重電大手のシュナイダーエレクトリックやガス事業者の日本瓦斯など、例を挙げればきりがない。