この発言を耳にして、個人的に思い出したことがある。

 一昨年の夏、大手企業とスタートアップをつなぐ情報プラットフォームを提供するCreww(東京・目黒)を取材させてもらった際、代表の伊地知天氏が語っていた「従来スタートアップと大企業が協業しようとすると、スタートアップは大企業の下請けのような扱いを受けてきた」という言葉だ。

 経済産業省が2016年に公表した企業向けアンケート調査では、「オープンイノベーションへの取り組みは10年前と比較して活発化しているか」という問いに「活発化している」と答えた企業は約45%。「後退している」の約3%を大きく上回った。

 だが大企業が独りよがりな発想のままアイデアを募っても、社外のフレッシュな発想力を取り入れられず、コンテストが不発に終わることも多いと聞く。

 そこをサポートする役割を果たすのがCrewwの主要事業。いわばオープンイノベーションのプロフェッショナルともいえる同社の伊地知代表が「スタートアップを下請けのように扱う」ことに警鐘を鳴らしている事実は重い。

無意識だからこそ

 「いや、社内でも似たような議論は実はしてきていますから」──。

 きっと本当のことだったのだろう。悪気があって言っているようにも聞こえなかった。それだけなんの躊躇もなく、自然に発せられた言葉だった。

 だが無意識のうちにそんな「上から目線」な発言が飛び出るからこそ、問題は根深いのではないか。たとえ思ったほどの成果が出なかったとしても、やはりそれだけは口に出してはいけない言葉なのではないか。

 たとえばアイデア自体は社内で既出だとしても、そのアイデアを実現できていないとすれば、なぜなのか。コンテスト参加者の発表からヒントを見いだせるのではないか。結果として社内で出ているものと変わらないアイデアであっても、発想の起点にユニークな特徴はないのか。そこから、自社で考えていたサービスを改善する糸口を見つけることはできないのか……。

 上から目線のビジネスコンテスト、参加者へのリスペクトに欠けるビジネスコンテストには、じきに応募も集まらなくなるのではないか。業界を問わず、数多くの企業がオープンイノベーションを掲げている。産業担当の記者としてこうしたイベントを見学する機会も増えてきたなか、重要な課題を改めて認識した。

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