「マツキヨ」ブランドどう立て直す

 ドラッグストア業界は、現在6兆円ほどの市場だが、すでに市場は飽和を迎え、小商圏化が進んでいるのが現状だ。現在は、人口1万人程度で採算が取れるような店舗が市場を席巻し、その影響で、食品を扱うドラッグストアが増加している。毎日足を運んでもらえるような食品を取りそろえることで、客数を確保できるからだ。一方、都心や駅前を中心に成長してきたマツキヨは「新規出店数が計画を下回る年も少なくなく、煮詰まり感が見えていた」(いちよし経済研究所の柳平孝主任研究員)。

 そんな業界で、象徴的だったのが、マツキヨHDの売上高首位陥落だろう。マツキヨHDは、2016年度の売り上げ規模でウエルシアホールディングス(HD)にその首位を明け渡した。マツキヨHDの2017年3月期の連結売上高は、前期比0.2%減の5351億円。ウェルシアHDの2017年2月期の6231億円を下回った。それだけではない。6月20日に発表したツルハホールディングスの2017年5月期の売上高も5770億円とマツキヨHDを抜いた。マツキヨHDは一気に順位を3位まで落としたことになる。

 マツキヨHDが一世を風靡したのは90年代。当時、マツキヨはある種の「ブランド」だったといってもよいかもしれない。札幌に住んでいた記者も当時、東京に遊びに行った際に、マツキヨで買い物をしたときにもらった小さな紙袋を、シワを丁寧に伸ばし、しばらくタンスにしまってとっておいたくらいだった。ドラックストアに「憧れ」を持つとは、今となっては不思議だが、それくらいの存在だったということだ。

 一方、「90年代後半にマツキヨブームは終焉を迎えた」(いちよし経済研究所の柳平氏)。M&Aなどによる業界再編が続き、小商圏化が進んだ。柳平氏は、マツキヨHDの失速を「先行企業の呪い」と分析する。「当時の平米数のトレンドは500㎡が主流。一方、今は1000㎡が成長フォーマットの主流。マツキヨの店舗は陳腐化してしまった」と話す。

「食品」と「調剤」で再編するドラッグストア

 そして今、マツキヨはより筋肉質な企業に生まれ変わろうとしている。1つのきっかけは社長交代だろう。創業者の孫である松本清雄氏が父親の南海雄氏から社長のバトンを引き継いだのが、2014年4月。清雄氏が社長に就任してから、マツキヨHDは利益率向上に成功している。就任一期目の2015年3月期の売上高は4855億1200万円で、営業利益は176億3300万円。一方、今期2017年3月期では売上高5351億3300万円に対し、284億3100万円。売上高は2年で11%増なのに対し、営業利益は1.5倍以上になっている。

 売上高で2社に抜かれたことも、松本社長は「気にしていない」と意に介さない。「まったく焦っていない。焦っていたら売り上げ作ってでも首位を守った。今は骨太になることだけを考えている」(松本社長)と明言する。松本社長は続ける。「もっと言ってしまえば、今まで追われる立場だったのが、追う立場になった。地に足を付けて、追う立場として挑戦できる、ある種の余裕さえ生まれた」という。

 現在、マツキヨHDは地方の店舗のスクラップアンドビルドを進める一方、都心は特徴を打ち出した店作りや既存店の改装を進める。2017年3月期の店舗純増数は10店舗だが、87店を閉店し、97店を開店しているため、「純増は10といえど、猛烈にスクラップアンドビルドしている印象だ」(柳平氏)。駅前や都心で培ってきた強みを活かせる店舗戦略で筋肉質にしていく構えで、ビューティーユーなども自社の強みを活かせる戦略的新規事業という位置づけになるだろう。

 ドラッグストア業界は今なお大きく変化を遂げている。ウエルシアHDは今後、24時間オープンの店舗を2019年度までに400店にすると意気込み、今後はコンビニエンスストアとの商圏争いにもなりかねない。業界自体も、今後M&Aがさらに進みコンビニ業界のように数社による寡占状態になることも考えられる。マツキヨはイノベーションのジレンマを乗り越えられるのかを問われることになる。