現在、大手企業を中心に、LGBT支援制度の構築が進んでいる。

 資生堂は、ミッションの一つとして「性別、性的志向、年齢、国籍によらず、すべての人を美しくすること」を掲げ、LGBT支援に積極的だ。同社は2010年頃から岡山大学病院で、性別適合手術をした患者にメイクアップのアドバイスを実施している。全社をあげて具体的にLGBT支援に取り組み始めたのは2014年。従業員を研修して、LGBTへの正しい理解を促す。さらに、本社機能のある汐留オフィスの各階には、ジェンダーフリーのトイレを設置。2015年からは日本最大級のLGBTイベント「東京レインボープライド」にメイクアップ体験ブースを出す。今年は従業員ら180名がボランティアとして駆けつけた。

東京レインボープライドでの資生堂ブース。性別や年齢などにかかわらず誰でもメイクアップを体験できる。

 アクセンチュアも積極的な支援を実施している。会社のイベントには同性パートナーと参加することが可能。同社が加入している生命保険では、同性パートナーを受取人に指定することもできる。また、同性パートナーが扶養相当の場合、健康診断費用を会社が負担する。現行の健康保険法では同性パートナーは扶養対象者として認められていないためだ。金銭的補助をする例はLGBT支援に積極的な企業の中でもめずらしく、「もしものときも会社が守る」という姿勢を見せる。

 自治体も動き出している。2015年、東京都渋谷区は全国に先駆けて制定した「同性パートナーシップ条例」に基づき、「パートナーシップ証明書」の交付を開始した。同性同士のカップルも、結婚に相当する関係と認めるものだ。東京都世田谷区や三重県伊賀市なども、パートナーシップを宣誓した同性カップルに対し「受領証」を交付するなど、同様の取り組みを行っている。

人は誰しもマイノリティ

 記者は、女性の体に生まれ、自分が女性であるということにも違和感はない。好きになる対象も男性である。一見すると「マジョリティ」の人間だ。しかし大学時代の1年間を過ごしたオーストラリアの片田舎では「マイノリティ」だった。「白人」が多く住むその町では、「アジア人」の記者はマイノリティだったのだ。

 誰しもマイノリティになりうる。現在日本の会社で「普通に」働いている人も、明日事故にあって身体が動かなくなるかもしれない。親が倒れて自分が介護を担うことになるかもしれない。

 LGBTはマイノリティの一つの象徴でしかない。

 記者は新潟出身であるが、異性愛者であることも、同性愛者であることも、バイセクシュアルであることも、出身地がどこであるかと同じような議論だと思っている。新潟出身であることは、記者を構成する要素の一つだが、記者のすべてを表すものではない。

 Aさんの話は、企業のLGBT支援の落とし穴に気づかせてくれた。社内にLGBT支援制度があっても、入社する前の段階で無意識にLGBT当事者を排除しているかもしれないのだ。エントリーシートが書けない、説明会に行けない……。当事者でなければそのことに気づきにくい。

 「性別の欄がない証明証って運転免許証だけなんですよ」

 Aさんに言われてはっとした。言われなきゃ気づかないな、と思った。確認してみると、たしかに健康保険証にも、パスポートにも性別の欄がある。

 LGBT当事者が就職活動でぶつかっている壁。非当事者には思いも寄らないものがあるかもしれない。

 記者も昨年就活を行ったばかりだ。皆が同じ服を着て同時期に動くことに違和感を持っていた。LGBTに直接関係すること以外でも、そもそも現行の就活に問題はないのか。今一度、就活の在り方を考えてみるべきなのかもしれない。