バイオ医薬品には抗体医薬品のほか、遺伝子レベルで病気の原因物質をブロックする「核酸医薬品」、低分子化合物と抗体医薬品の両方の特徴を持つ「ペプチド医薬品」があるが、そこでも同様の変化が起きている。核酸医薬品の製造では、日東電工が2011年2月、核酸医薬の受託製造大手の米アビシアバイオテクノロジーを買収し、世界のトップシェアを勝ち取った。味の素は16年12月に大阪のCDMOであるジーンデザインを買収。自社が持つ合成技術「アジフェーズ」と融合させることで、日東電工グループに次ぐシェアを狙う。

 ペプチド医薬品では、日本発の創薬ベンチャー・ペプチドリームが勢いづいている。同社は今年6月、塩野義製薬や積水化学工業、島津製作所、長瀬産業など10社以上の化学系企業と共同で、「特殊ペプチド」を製造販売する新会社を設立する方針を発表した。特殊ペプチドは、がんなどあらゆる病気の治療薬となる可能性を秘めている。オールジャパンの体制を敷く背景には、特殊ペプチド医薬品の周辺技術の流出を防ぐとともに、日本の製薬産業を活性化させ、約2.4兆円に上る医薬品の輸入超過を解決するという窪田規一社長の強い思いがある。

半導体産業の轍を踏まないために

 読者の多くはもうお気づきだろう。この産業構造の変化は、かつて半導体産業がたどった、ファブレスとファウンドリーの分業化の歴史とよく似ている。日本の半導体メーカーがこの分業を嫌がり垂直統合型メーカー(IDM)に固執したことが、日本の半導体産業の衰退の一因であると指摘する声もある。

 バイオ医薬品の受託製造では、サムスンバイオロジクスやセルトリオン、バイネックスなど韓国勢が躍進している。一方、日本のバイオベンチャーは04年をピークに伸び悩んでおり、バイオ医薬品もほとんど生み出せていない。高齢化により医薬品の国内市場規模は縮小しており、13年には米国に次ぐ世界第2位の座を中国に奪われている。このままでは、半導体産業の轍を踏みかねない。

 そんな中、注目されているのが、グローバルで1兆7000億円の売上を誇る武田薬品工業の動きだ。同社は17年3月と5月に新会社を相次いで設立し、これまで湘南研究所で行ってきた創薬研究の一部事業の外部化を進めている。武田薬品は現在、がん、消化器系疾患、中枢神経系疾患とワクチンへの特化と、日本と米国への機能集約を通じて、研究開発体制の変革を加速している。

 この成否によっては、追随して研究開発部門の分社化に踏み切る企業が出てくる可能性もある。景気変動に強く、成長産業として捉えられてきた日本の製薬業界。世界市場で勝ち残るために、大胆なビジョン変革と迅速な意思決定が求められている。