実際、保育園はどのくらいの時間、子供を預かってくれるのか。例えば東京都世田谷区の場合、7時15分から18時15分が基本で、19時15分まで延長保育をしている認可保育園が一般的。日曜日と祝日は休みだ。

 T&Gがみなとみらい地区に開園を予定してる保育園は7時30分から18時30分が基本だが、夜9時30分まで子供を預かってくれる。日曜日や祝日も開園する。認可外のため開園時間や園児の受け入れで自由度が高い。T&Gでの働き方に合わせて社員が子供を預けられる仕組みになっている。

 園児の定員は30人で将来は50人まで増員する計画もある。社員の子供以外にも地域住民や近隣の企業の従業員の子供も受け入れる。

 社内保育園にせずに一般からも受け入れる体制にしたのはなぜか。岩瀬社長は「保育園事業はある程度の規模が必要だ。T&Gは全国に展開しており、1カ所のオフィスに従業員が集中しているわけではない。T&Gの社員だけでは定員に満たない。そのため、社外からも園児を受け入れる必要がある。T&Gの社員の園児にとっても、さまざまな仕事をしている親御さんの園児と触れあった方が、コミュニケーション、教育の点でも望ましいと考えた」と話す。

 もう一つ、大きな理由は「これを機に本格的に保育園事業を手掛けたいと考えているからだ」と説明する。

 岩瀬社長は自社の課題からサービス業の従業員のニーズに合わせた保育園には市場性があると考えた。開園の契機になったのは2016年4月に政府が待機児童の解消を目指して開始した「企業主導型保育事業」だった。企業が自由に保育園を設置できる制度で、設置に際して自治体への届け出だけで許可が必要ない。企業の従業員を優先して受け入れられるなどのメリットがある。定員枠の半数以下であれば地域の住民を受け入れることができる。

 T&Gの場合、複数の会社、特に夜や日曜祝日に働く必要がある、同じ悩みをかかえるホテルやアパレル販売店などサービス業の企業と提携して、定員の半数以上をT&Gを含む企業の従業員の子供を受け入れる計画だ。そして残りを地域住民に開放する。

 つまり、複数の会社にとっての共同の社内保育園というイメージだ。さらに、地域住民を受け入れることで園児の多様化を図り、地域貢献にもつなげる。

提携企業からの収入で経営を安定させる

 T&Gの保育園のスキームは保育園経営の肝となる収益構造にも寄与する。提携する企業からは受け入れ人数に応じた費用を通常の保育料(月間税抜き5万円から)とは別に受け取る。岩瀬社長は「1人あたり月間5万円程度を想定している」と話す。

 例えば50人の園児の内、30人を提携企業から受け入れれば、T&Gの保育園にとっては月間150万円の収入となり保育園の運営費用に充てられる。一方、提携企業にとっては自前で社内保育園を作らずとも、毎年確実に入園枠を確保できるメリットがある。例えば毎年5人の入園枠を確保する場合、年間300万円だ。

 「このビジネスモデルならば、十分、事業化が可能だ。市場はあるので今後は婚礼以外の事業の柱として本格的に展開したい」と岩瀬社長は意気込む。

 ちなみに記者は最初にT&Gが保育園事業を始めると聞き、結婚と保育の関係性について考えた。ライフイベントとして、結婚、出産と続き、子供を保育園に預けるという流れは自然だ。そこで思いついたのはT&Gで結婚式を挙げたカップルが将来、子供が生まれた時に確実にT&Gの保育園に入れる仕組みだ。

 これについて岩瀬社長は「そこまでの考え、計画はない」と笑った。自宅のそばの保育園に子供を預けるのが通例であることを考えれば、T&Gで結婚式を挙げたカップルが住む全国のエリアをカバーすることはもちろん難しい。みなとみらい地区に住んでいるカップルの子供を預かることはできるかもしれないが、保育園に確実に入れる条件を武器にT&Gの婚礼事業の競争力が増すという見立ては確かに無理がある。

 それでも昨今の保育園の受け皿不足を考えると、そこまで推測したくなる。結婚を考えているカップルにとって、いわゆる「保活」(子供を保育園に入れるための活動)は大きな不安要素でもあるからだ。多様な働き方が進む一方、受け皿に加えて、開園日や時間帯でより柔軟な保育園のニーズも高まっている。

 T&Gが展開するサービス業に特化した保育園は、こうした日本の保育園問題を解決する一つのヒントになり得るだろう。

■変更履歴
記事掲載当初、記事のタイトルおよび本文中で、「テイクアンドギブ・ニーズ」としていた社名は、「テイクアンドギヴ・ニーズ」の誤りでした。お詫びして修正します。タイトルおよび本文は修正済みです [2017/06/28 10:30]