墓地を「経営」する難しさ

 墓地を持続的に存続させる仕組みの一つが「経営」だろう。一般的な墓地のビジネスモデルは、戸建住宅と同じ「売り切り」だ。檀家として登録し、お布施と管理料によって維持していく。ただし、「このモデルはある程度、檀家数の規模がないと成り立たない。現代では檀家になろうとする人が少なく、難しいだろう」(慈眼寺の田辺住職)。

 有期供養であれば、代替わりによって収入が見込める。ただし、永代供養が一般的な日本において、「期限が来たら合祀する」というのはチャレンジの一つだった。流行りだした樹木葬でも、一般的なのは永代供養だ。供養の儀礼についてもそうだろう。個別のお供え物は認めていないからだ。

 「全く違和感はありませんでした」。田辺住職は関野さんの提案をこう振り返る。挑戦的ではあるが、ニーズも多様化しているし、何よりビジネスとして成立しなければ存続できない――。そんな思いがあったはずだ。

 「正解は一つじゃない」。関野さんはこう言う。だからこそ、彼女は設計するたびに、仕組みを含めたこれまでにはないカタチを提案している。

 共通しているのは、時間が経つほど良いものになるデザインだ。長い時間、耐えうるもの。それが結果的に、持続的な墓地を実現する。「血縁でなくとも、長い時間受け継がれているものは価値が高まる」(関野さん)からだ。

 時代が変われば「住まい」のカタチは変わる。それは生きている間に住む家も、死んだ後に眠る「墓」も同じだ。ただ、そこには時差があった。60年前に51Cを発明した日本の設計者。住宅需要は60年経って墓需要に変わり、今度は墓に発明を迫る。関野さんの取り組みは、現代社会の命題に答えようとしているように見える。