倍率30倍で墓に入る

 生まれた地域と死ぬ地域が異なる時代に、墓のカタチは既に多様化している。地方の墓地では跡継ぎがおらずに墓じまいをする例も目立つようになった。

 一方、都市部では墓地が圧倒的に不足している。東京都内の墓地需要は年間3万基とみられるが、法規制や近隣住民の反対などで墓地の新設はほとんど進んでいない。既存墓地の拡張でしのいでいる状況が続く。東京都によれば、2016年の都立墓地の抽選倍率は6.1倍(一般埋蔵施設)である。

 ニーズの変化もある。子がいない夫婦や離婚した人、同性婚などの家族のカタチの変化だけではない。子息に迷惑を掛けまいと都市部における家墓を敬遠する層や、夫婦であっても別々に眠りたい人など、死後のニーズ様々だ。

 供給不足やニーズの変化に応じて、墓のカタチも変化している。都心部ではベルトコンベア式の納骨堂が増え続ける。まるでタワーマンションのようだ。

 墓石の代わりに樹木を墓標とする「樹木葬」が日本で初めて登場したのは1999年。岩手県一関市の寺で認可が降りると2000年代に見学が相次ぎ、首都圏でも民間の樹木葬墓地が多く生まれた。東京都も2012年、小平霊園に都立初となる樹木葬墓地を作った。初年度の倍率は30倍を超えた。

 関野さんが設計した「風の丘」も、樹木葬を名乗ってはいるが、実際のところ樹木を墓標とするという狭義の樹木葬ではない。まだ名前も付いていないほど新しいものだ。

 彼女が物体としての墓だけでなく、儀礼の方法や有期供養などの仕組みも含めて提案するのは、その墓を持続的に存在させなければならないという思いからだ。

 「10年以上、墓地の設計を続けてきて、現代社会のライフスタイルを墓地にも求められていることは強く実感している。地縁血縁だけでない関係性も重視し、家族の在り方も変わった。合理的なものこそが正しいと思う傾向が強まり、仏教的な考え方が合わない層もいる。夫婦やパートナーとの関係も変化した。どこにでも行ける時代になり、インターネットで世界とつながっている」

 「うまく言葉にできないけれど、個人としての『個別性』を重視する一方で、つながっていたいという『連続性』も大切にする。その両面が墓地に求められている。『社会の一部』としての身体の重要性も高まっているように思う。だからこそ、子孫に迷惑はかけたくないがどこかで誰かと眠っていたいというニーズがある」