それは世代間格差の大きな拡大である。増税を延期するほど、将来世代の負担が重くなるのである。例えば今、A、B、Cの3つの世代があるとする。Aが高齢者、Bが現役、Cは子供である。消費税を主に負担するのはAとBであり、それぞれ5の税を払っている。ここでさらに5の増税を行う必要があるのだが、先送りした。

 するとAは、新たな負担をしないまま退出し、B、Cあるいは、Cとさらに次のDの世代が10を払うことになる。この時点で後の世代ほど負担は増えるが、難題は負担と受益の関係にある。負担増となった税収の一部がAの世代の間に使われていた(つまり穴埋め)となると、負担と受益の関係は大きく崩れる。今の世代ほど恩恵は大きく、将来世代ほど小さくなるのである。

 「世代会計」と呼ばれるものだが、その専門家で中部圏社会経済研究所のエコノミスト、島澤諭チームリーダーによると、今回の消費税引き上げ延期は、例えば来年生まれる子供たち全員に56万4000円の新たな負担を強いることになるという。

 消費税が社会保障目的税であり、既に膨大な歳入不足を抱えている以上、増税延期は負担の後代への押しつけと言える。

社会保障のコストは急増を続けてきた 社会保障給付費の推移
出所:厚生労働省を基に本誌作成

 もちろん、これがすべての解決策であるわけはないが、そこで吉川教授の提唱する「今までありがとう税」である。この仕組みに見るべきものがあるとすると、その1つは今、恩恵を受けている人たちが、今負担をして負担と受益の関係を正すことだ。

低年金者が増え、高齢者の2割が貧困に

 もちろん、一筋縄でいくとは思えない。例えば公的年金は、支え手である現役世代が減り、受給者の高齢者が激増している。このため、年金財政は大幅に悪化し、政府は2004年の年金改革でマクロ経済スライドという仕組みを導入した。賃金や物価の上昇に応じて増える年金額を、現役世代の減少率や平均余命の伸びなどで抑制するというものだ。

 仕組みは画期的だったが、デフレ時には発動しないこととしたため、昨年適用されただけで、これまでほとんど動いていない。これもつまり、今の世代が使っている分のつけを将来世代に回しているのと同じである。

 ただし、マクロ経済スライドを完全に実施すると、今度は将来、大量の高齢者貧困が発生する。特に単身者などで年金額が減少していくためだ。稲垣誠一・国際医療福祉大学教授の推計では、2050年代には高齢者全体の20%が生活保護の対象水準になるという。

 そうならないためにも、今の世代から負担すべきものは負担し、受益との関係を正していく必要があるのだろう。その一方で経済というパイを拡大し、各世代が恩恵を受けられる環境を作り直すことも重要だ。

 当然だが、特効薬はない。もつれたひもを解くように1つずつ解決していくほかないのだろう。どの世代にも逃げ切りは許されないはずだ。