「今までありがとう税」を知っていますか。

 といっても、覚えのある人はまずいないだろう。立正大学の吉川洋教授が導入を唱えている「空想の税」にすぎないからだ。

 しかし、名前もユニークなこの税は、中身も面白い。高齢者が亡くなる時に持っている金融資産の1割を納税しようというものだ。億円単位のカネを持つお金持ちも、数十万円しかない庶民も、等しく負担しようという、その考えは、「生涯を通じて、教育、警察、医療・介護、年金と、社会から様々な恩恵を受けてきた事に対するお礼」(吉川教授)であるという。

 いきなり聞くと、いかにも天下の暴論のように感じられるかも知れないが、下地も理屈もある。ある官庁の調査によると、個人の場合、所有している土地や自宅などは子供や孫に相続させたいと思っているが、預貯金や株式など金融資産については必ずしもそう考えていない。額にもよるのだろうが「自分たち夫婦や個人で使い切ってしまおうと考えている」(同)という。

増税延期で子供1人、56.4万円の負担増

 必ずしも子供たちに渡したいわけではないとすれば、人生の最後に使い残した分の1割を納税して貰い、社会保障にも財政再建にも生かそうというわけだ。吉川教授によれば、「数兆円の規模になるはず」。

 一見、相続税にも似ているが、そちらは資産を受け継いだ側が納税する。これに対して、ありがとう税は持ち主本人が最後に納税する事で税収も確実に出来るという。

 何故今この話を持ち出したのかと言えば、消費税引き上げの再延期があったからである。2014年4月に消費税を5%から8%に上げ、さらに2015年10月に10%にする予定だったのを2017年4月に延期。それを再び2019年10月に延ばしたのは誰もが知るとおり。

 だが、この影響はよく言われる財政再建への黄色信号、社会保障充実策の先送りといったものだけではない。さらに根深い問題がある。