わかりやすくいえば「音声版のターゲット型広告」というところだろうか。ストリーミングならデータを配信するたびにリアルタイムで内容を編集できる。リスナーの属性や番組の聴取履歴をもとに広告を自動で流し分ける仕組みが可能になる。

 音楽番組を例にとってみよう。音声版ターゲット広告なら、番組部分で流れる曲は一緒でも、そのあいだに流れるCMはリスナーの嗜好に応じて変えられる。具体的には、投資情報番組をよく聞くリスナーには不動産のCM、バラエティ番組をよく聞くリスナーにはレジャー情報、などとリアルタイムで選択して配信できる。

 広告業界でも、こうした新型の広告商品の取り扱いを加速させている。電通は今年4月、「プログラマティック・オーディオアド」と名付けて営業を開始。博報堂系のネット広告会社DACも今月、音声広告に対応したサーバー「FlexOne APE」の提供を始めた。

 地上波でのラジオ放送では難しかった形式の広告でも、ネットを使えば実現できる。今後は「TBSラジオクラウド」だけでなく、radikoを通じた放送でも応用できる可能性が高いといえるだろう。

ラジオ復活の起爆剤となるか

 TBSラジオの売上高は2006年3月期に156億円あったが、2016年3月期には106億円まで減った。ビデオリサーチによると、この間にラジオ全局の平均聴取率の合計も約7%から1~2ポイント低下している。苦境が続くラジオ業界だけに、ネット時代にも通用する新型の広告に寄せられる期待の大きさは計り知れない。

 「ながら聞き」ができる、出演者とリスナーとの距離が近い――。音声メディアには、音声メディア独特の良さがある。無料だからこそリラックスして聴けるという側面もあるだろう。インターネットの浸透でラジオ業界はいよいよ生まれ変わりを迫られている。TBSラジオによるPodcast撤退も、いずれは「音声メディア復活の狼煙が上がった瞬間」として振り返られるようになるかもしれない。リスナーの1人として、新しい取り組みの成功を祈りたい。