「感性価値」が重要

 PwCコンサルティングの白石章二パートナーの言葉を借りれば「今の自動車業界に求められているのは『感性価値』の創出」だそうだ。というのも、「走る、曲がる、止まる」の基本性能は完成度が高まっていて「数字ですぐ見える性能の差別化は難しくなっている」からだ。

 そこで差別化のためにはユーザーの感性を揺さぶり、感動を生む技術が求められている。例えばスマートフォンでは、通信速度やバッテリーの駆動時間といった基本性能の向上から、音声認識機能や指紋認証といったユーザーに意外性を感じさせる技術の開発へ進化の方向性は変わっていった。

 自動車産業でいえば、自動運転がこうした感動を創出することは間違いないが、マツダの地味技術も捨てたものではない。元々マツダは1980年代から感性工学の研究を推し進めてきた“感情に訴える”メーカーだ。当時開発されていたスポーツカー「ロードスター」のテーマ「人馬一体」を、ここ数年は全車種に適用する設計思想として掲げてきた。

 GVCはこの思想を体現する技術の1つだ。搭載、非搭載を乗り比べなければ違いは分かりにくいが、運転が苦手な記者が感じたように「はまる人にははまる」技術とも言える。

 マツダはGVCを標準機能として全車種に搭載し、価格は据え置く。ソフトウェアの追加のみで実現可能なためコストを抑えられるという事情はあるが、6年もの歳月をかけて開発した技術を利益に直結する売り出し方はしない。地道にユーザーのロイヤリティーを高めていく「弱者の戦略」が実を結ぶか、今後も注目したい。