例えばサッポロが2013年に第三のビールとして発売した「極ゼロ」(現在は発泡酒)。世界で初めて痛風の要因とされるプリン体や糖質をゼロにしたビール類商品として打ち出した。製法を巡る国税当局との軋轢も生んだが、同商品が呼び水となり他社も相次ぎ参戦。消費者の需要に応える形で「機能系ビール類」という分野が確立され、市場全体が縮小するなかでは比較的健闘している。

 もちろん、現状のままではこうした開発競争は日本という限られた市場での「コップの中の嵐」に過ぎない。だが、新興国も含めて世界的に規制が強まり健康志向が高まるなか、こうしたR&Dの資産を生かすことができる可能性はある。健康リスクの低減と高品質な味わいを両立できるビールは、現状では先進国のなかでもほとんど見られないためだ。

アサヒグループホールディングスの小路明善社長(写真:的野弘路)
アサヒグループホールディングスの小路明善社長(写真:的野弘路)

 アサヒグループホールディングスの小路明善社長は「日本で培った醸造技術や品質改善のノウハウは、海外展開で大きな武器になる。『日本発』『メード・バイ・ジャパン』の考え方が重要だ」と強調する。実際、同社は今年中に欧州でビールの有力ビール会社など4社を約3300億円で買収する計画。主力の「スーパードライ」の知見などを提供することで欧州開拓を本格化させる。

炭酸飲料や自動車も規制強まる

 たばこやビールに限らず、今や「健康被害の低減」という旗頭の下、炭酸飲料や菓子といった食品、さらには自動車に至るまで様々な規制が広がっている。企業は業界団体などを通じたロビー活動も積極化させているが、こうした波を押しとどめることは中長期で見ればもはや不可能なように感じる。

 その点、企業を存続させるために大きく方針を転換し、新たなデファクトスタンダードの確立を目指しているフィリップ・モリスの取り組みは、今後の成否はどうあれ企業の1つの姿勢として評価できるだろう。規制に抗うだけでなく、環境の変化を乗り越えて生き残る「適者生存」のためのイノベーションが、これまでになく重要になろうとしている。

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