特殊な液体で軟化しシールドマシンで掘り出された土はペースト状態

アジアへのインフラ輸出の武器に

 シールドマシンは前方の土を特殊な液体で軟化させながら、ゆっくりと着実に掘り進んでいく。岩があっても砕きながら掘ることができるという。意外に掘り進む際の音は静かだ。前方では土を削るカッターが回転しているわけだが、それは見えないので一見すると動いている感じがあまりない。シールドマシン後方のチューブからは掘り出された大量の土が出てくる。これを地上に運ぶのも一苦労だ。一度容器に入れ、輸送用のトロッコで縦穴の位置まで運ぶ。そこからクレーン車で地上まで引き上げる。土を回収するだけでも何人もの作業員が慎重に連携しないと大きな事故にも繋がりかねない。

 様々な手間と時間をかけて、丸の内の洞道は掘り進められていた。大きな縦穴やトンネルをビルとビルの間の限られたスペースから、かつ限られた時間の中で掘り進めなくてはならない。建物や地下鉄が密集する丸の内ではそういった周辺施設への影響が特に重要で、土木工事のダイナミックな印象に反してかなり高度な計画性が求められるはずだ。

 今回記者が見せてもらったのは電気などライフライン用のトンネルだったが、シールドマシン工法は地下鉄などのインフラに用いられることも多い。海外、特にアジアではインフラ整備の需要が大きい。日本ほど建物の耐震性が高くない国も多いので、大規模な土木工事が周辺の建物に与える影響という面ではより神経を使う必要がある。日中韓が受注競争で火花を散らす中、日本勢が持つ高い技術は武器になるはずだ。

 深夜まで続く丸の内の地下工事。夜が明けて行き交う人々で賑わう頃、仲通りはまたいつもと変わらない落ち着いた雰囲気に戻っている。ただこれからは、この通りを通る度に街の魅力を守る人たちのこだわりと、日本の高い技術を思い出すだろう。